トップページ > 会員サービスのご案内 > おとなび > 観光特集 > 特集 2019年9月号
特集 2019年9月号
秋の信州・北陸 旬の味覚と紅葉の風景
頬をなでる風が少しひんやりとしてきたら、いよいよ秋の到来だ。実りの季節、信州の大地が育んだ山の幸、北陸ならではの海の恵み、そして食だけではなく鮮やかに紅葉する絶景を求め、信州・北陸の旅へでかけよう。
秋の味覚の王様、松茸味わうならば信州へ
信州・長野県は、日本有数の松茸産地として知られている。なかでも最高品質の松茸が採れるのは、長野県の東部に位置する上田市。日本最長の千曲川(ちくまがわ)が流れ、菅平高原(すがだいらこうげん)や美ヶ原高原(うつくしがはらこうげん)などが広がる、自然豊かなエリアだ。松茸といえば、人工栽培ができず、アカマツの根元にしか生えないうえ、好条件が揃わないと成長もできない。盆地である上田市は、気候や土壌がその条件に合致して、松茸が育つのに最適な環境なのである。
また、松茸は採取してから調理するまでの時間が早ければ早いほどよいとされ、採取後2~3日ほどが食べ頃だといわれている。上田市の松茸が香り、味わいともに極上なのは、採れてすぐ、新鮮なうちに調理されるのも理由のひとつだ。
いつもと趣向を変えて松茸小屋へ赴くのも一興
-
上田市の松茸は、例年9月上旬から10月下旬がシーズン。その時期になると市内各地に期間限定の松茸小屋がオープンし、土瓶蒸しや焼き松茸、松茸ご飯、松茸鍋といったさまざまな料理を楽しめる。豪華な松茸料理を肩肘張らずに味わえる雰囲気、季節限定の場で松茸をいただく特別感、豊かな自然に囲まれる開放感、それらも松茸小屋の魅力である。
もちろん、松茸小屋だけではなく、料亭や温泉旅館などでの食事もおすすめ。部屋の設えや料理が盛り付けられた器、趣ある庭園を楽しみながらいただく松茸料理もまた、格別の良さがある。
今年の秋は、信州が誇る最高級の松茸、その“ホンモノ”のおいしさを堪能しよう。
北陸の新鮮な海の恵みに舌鼓
富山湾近郊は水産資源の宝庫
食欲の秋を満喫するならば、山の幸だけではなく海の幸もはずせない。北陸は富山県、その北部にある富山湾では、鮮度抜群の魚介類を使用した料理が堪能できる。富山湾は海底の地形により漁港に近い位置で漁ができるため、とれたての魚がすぐに市場に並ぶ。また、表層を暖かい対馬暖流が、深層を冷たい日本海固有水が流れており、暖流系・冷水系の両方の魚が生息。そのため多種多様な魚が獲れるのだ。これらが、富山湾が「天然(てんねん)の生(い)け簀(す)」と呼ばれる所以である。
市場には旬の食材がずらりと並び、秋ならば、9月頃から身が柔らかく上品な甘みをもつベニズワイガニや、独特の甘みととろける舌触りが特徴のアマエビなどが出回りはじめる。富山県の旬の味覚を、一番おいしい新鮮なうちにいただこう。
食材の旨み際立つ「富山湾鮨」
そんな富山湾では、富山県ならではの寿司「富山湾鮨」を味わうのがおすすめ。県内各地には数十軒、富山湾鮨を提供している店が点在しているが、いずれも食材にこだわる名店揃いだ。
富山湾鮨がおいしいのには理由がある。まずは魚。先述の通り、魚の種類が多彩だ。その上、北アルプスの山々から豊富な酸素と栄養分が供給されるため、十分に旨みと栄養を蓄えた、おいしい魚が育つ。富山県は「全国名水百選」にも多く選定されているほど、名水にも恵まれている。立山連峰をはじめとする山々に降り積もった雪が地下水となり、夏でも豊かで清涼な水を運んでくれるのだ。そして最後に米。豊富な水と肥沃な大地に恵まれた富山県は、おいしい米が育つ条件を満たしている。
魚、水、米すべてが良質な寿司を新鮮なうちにいただけるのは、まさに富山県を訪れた人だけの特権。土地の旨みをぎゅっと詰め込んだグルメ紀行で、この秋、身も心も満たされる。
信州・北陸のさまざまな秋景色
小さな棚田が広がる日本の原風景
長野県千曲(ちくま)市の冠着山中腹に位置する姨捨(おばすて)の里。姨捨は平安時代から観月の名所として知られ、古今和歌集にも詠まれた場所。斜面に並ぶふぞろいな形の小さな田んぼの水面に月が移りゆくことを「田毎(たごと)の月」と呼び、松尾芭蕉や小林一茶など多くの文人がこの地を訪れ、棚田の絶景を題材に歌や句を詠んだという。
四季折々に美しい姿を見せてくれる姨捨の棚田だが、秋の風景といえばハゼカケ。ハゼカケとは、ハゼと呼ばれる物干しに刈り取った稲を束にしてかけていく昔ながらの自然乾燥法で、稲刈りが終わった棚田のあちらこちらには、ハゼカケの稲が揺れるのどかな風景が広がっている。
ほかにもおすすめなのは、高原の風と共に走る観光列車「ろくもん」。信州の食材をふんだんに使った食事とともに、姨捨の棚田や千曲川の雄大な景色を堪能できる。
そして、長野県下高井郡山ノ内町に位置する「志賀高原」の紅葉も見逃せない。蓮池に赤や黄に色づいた紅葉が映り込み、池手前の黄金色に輝くススキや見渡す限りの大空、遠くに見える山々などとあいまって、色彩豊かな光景を形成している。
北アルプスと大地の恵み渓谷が美しく染まる秋
-
富山県東部に位置し、日本海に面する黒部市は、北アルプスからの豊かな水に恵まれ、美しい水の風景に出合える場所だ。黒部川上中流に広がる黒部峡谷は、日本一深いV字峡谷であり、日本一のアーチ式ダム「黒部ダム」があることでも知られている。
秋の絶景と言えば、やはり紅葉。黒部ダムの紅葉も見事なもので、赤や黄、橙に染まったメグスリノキやハウチワカエデ、ケヤキの色合いに、川のエメラルドグリーンが美しく映える。トレッキングで大自然に包まれたあとには、北陸有数の温泉地・宇奈月温泉で疲れを癒すのも良いだろう。
黒部峡谷の観光列車と言えば、「黒部峡谷トロッコ電車」。黒部峡谷の宇奈月駅~欅平駅の全長20.1キロメートルを結ぶ「黒部峡谷トロッコ電車」なら、美しい秋の絶景を車窓からのんびりと眺められる。エメラルド色の湖面が美しい「うなづき湖」やそそり立つ「出し六峰(だしろっぽう)」など、景勝地満載のコースだ。
この秋は信州・北陸を訪れて、秋の心地よい風を感じながら、この時季ならではの美食・絶景の旅を楽しもう。