
<執筆> くつざわ
1999年生まれ、千葉県出身。Twitterではエッセイや記事執筆、動画投稿を行う。SNSをメインとした広告やマーケティング施策、観光業のプロデュースなどを中心に活動。
Twitter: @kutsuzawa_desu
こんにちは、くつざわです。SNSでは何気ない日常の動画なりなんなりを投稿しています。
突然ですが、とあるアメリカの詩人はこう言ったそうです。 「青春は、人生のある期間のことでなく、心のもち方」だと(※)。
16歳であろうと60歳であろうと、未知への探究心、人生への興味の喚起がある。
人から地から、さまざまな感情を享受できるその若い心こそが、青春のことを指すんでしょう。
それで言うと、ニュースでよく目にする「失われた青春」というタイトルは、なくなったイベント自体でなく、それにより生まれる予定だった心の動きそのものを意味するんだろうか。
※ドイツ出身のアメリカの詩人・サミュエル・ウルマン(1840年~1924年)の言葉

そんなことを考えながら、阿蘇行きの特急に乗っている。
割引目当てに早めに購入した新幹線のきっぷには、「新大阪→熊本」と書かれている。その長旅の車窓からの景色は、過ぎる時間を忘れさせるほどに足早に変化していた。
22歳、熊本は阿蘇。
青い春のなんたるかを理解していなかった数年前なら、足を運んでいなかったのかもしれない。


きっぷの写真を撮っていたら、「ハンコ、押してあげるよ」と駅員さん。熊本弁の混ざる会話をしながら、ぽんと音を鳴らして赤い桜をプレゼントしてくれた。
そうそう、旅行はこういう、予定不調和な温かさがある。

阿蘇山どーん(?)。

駅の標識、駅舎の構造、周りの人、電車の姿形。
初めて足を踏み入れる土地の姿を、地元よりも冷たい空気とともにマスク越しに吸い込む。
この地にとって私は知らない人で、私にとってこの地は知らないところ。その事実を感じるたびに、久々の「旅行」を実感する。

観光地の商店街というのはどうしてこんなにも魅力的なんだろうか。
この季節でも食べたくなるソフトクリーム、隣でひけるおみくじ、古時計屋、所々にある湧き水所、小さな珈琲屋。一つひとつが、阿蘇を彩るために欠かせない意味を持つ。

ゆえに財布のひもが緩くなる。これも旅行中のテンションであり、そのテンションに身を任せてしまう時間は、旅の醍醐味の一つだから仕方ない。


商店街には「その地といえば」のグルメがあり、どこに行くかを電車で調べる時からおなかが空いていたりする。
待ちに待っていた阿蘇名物、あか牛丼。
私のGoogle検索履歴にずらっと並んでいた、あか牛丼。
それを頬張るときの幸福度はもう、カメラを向けられてもグッドポーズしか出せなくなるほど。
これは「あとで記事を書く」、ということさえ忘れている顔だ。
そんな客を笑顔で見守る店主のお父さんの優しさもまた、この商店街を形作る温かさの一つ。


上をめざし山道をくねくね登る車の中、耳抜きをしながら、とある牧場へ向かった。
到着してすぐ出迎えてくれた三匹のボーダーコリーが、短い合図で馬のもとへ走り出す姿は、まさに牧羊犬。

目的は、乗馬体験。
駅では遠く感じていた山々をそばに、よく見る「足で馬のおなかに合図する」アレをして風景が動き始めた瞬間の高揚感がすごい。
周りは広すぎる冬色の草原、牧羊犬に尻尾を引っ張られる馬たち。
「あ、私、今、熊本にいる」
ずっとわかっていたはずの事実を実感する瞬間もまた、旅の醍醐味。

風景の壮大さと馬の凛々しさ、戦国映画みたいになっていてウケます。

旅が好きな理由。それはその地の風土が五感で味わえるという部分。
風土というのは、文化の形成に影響するその土地ならではの気候や地形などの、環境の特徴のこと。
つまり、文化の前に風土がある。
人となり、衣食住、行事の元となる風土を感じられる瞬間が何より好きなのだ。
黒川温泉の「湯あかり」も、この阿蘇の風土を美しい形で味わえるものの一つ。

この綺麗な数々のオブジェ「鞠灯篭」は、9つの竹ひごが束ねられてできている。黒川温泉では放置竹林から環境を守るため、竹をまばらに切って手入れをする間伐を行っており、その竹がこの湯あかりの夜へつながる。

この川沿いの美しい景観も、黒川温泉の環境のために、そしてそれを観光地としても盛り上げるために考えられ、竹ひごを皆で束ね、湯あかりの時期を待つ。
そんな現地の方たちの数寄を凝らしたこの場所に赴くだけで、土地の風土を感じられる。それが私はたまらなく好きなんだ。


翌朝6時。
この日は冷え込み、マイナス8度の中、なぜか気球に空気を送り込む手伝いをしていた。
学生の頃なら、早起きをして上空から朝日を見ようとは思わなかっただろう。こういう気持ちの変化を成長とも捉えていいのではないか、まさに青春真っ只中という感じだ。

隣にいるのは気球操縦のプロフェッショナルのお父さん。
いい笑顔をしているが、この後上空50メートルで気球を揺らしてきて私の膝をガクガクいわせた張本人だ。罪深い。


徐々に昇る朝日が、後方の山々の岩肌をオレンジ色に照らし始めた。
高所恐怖症であることさえ忘れ、顔を出す太陽に自分の手を重ね、漏れる陽光にはしゃいでみる。


大の苦手、早起き。
お金を払えば毎日たっぷり寝られる、そんなサービスが現実にあれば私はきっと散財するだろう。
そんな私でも、そうか、その地でしか見られない景色に心を寄せられるようになったか。
今なら、学生時代、クラスで配布されたパンフレット片手に見た何かも、違う気持ちで楽しめるんだろうか。
有名な誰かを祀った石碑も、すべて同じにしか見えなかった建築物も、「修学旅行で見た四季の感想を書いてください」と感性の文字起こしを強制されたあの時間も。
今となれば、素直に楽しめる気がする。


老いるごとに、心が動きやすくなるのだとしたら、
老いるということは、心を若くするということだと、大観峰の地に立ち、思う。
だったらこれから先の人生、ずっと青春じゃんね! 年取るのサイコー!
って気持ちを1分の動画にしました。
なんと...iPhoneだけで...
— くつざわ (@kutsuzawa_desu) March 1, 2022
JR西日本×くつざわのタイアップ動画が完成!!!
熊本の魅力伝わってくれ〜🚅 pic.twitter.com/Jc7KNovz0P
青春の上を歩くみんなが、旅がしやすい世界になりますように!
著者:くつざわ
※感染防止対策を徹底したうえで取材を実施しました。
※新型コロナウイルス感染症対策を徹底したうえで、 撮影時等、必要な場合のみマスクを外して撮影しました。
【編集部より】卒業旅行や学生旅行に!おトクなきっぷ情報!
今回くつざわさんが旅をしたのは、「新大阪~熊本区間」。実は関西から九州に行くなら、14日前までのネット予約で新幹線のきっぷがとってもおトクになります! 青春旅でぜひご活用ください。

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◆旅のスポット情報【熊本・阿蘇】

スポット名門前町商店街
<編集部コメント>
ご当地グルメを食べたりおみくじをしたり、旅の情緒にゆったりと浸れる商店街。電動アシストのついたウォーキングバイシクルをレンタルして、ピューンと町巡りをするのもおすすめ。

スポット名阿蘇 あか牛丼専門店 ごとう屋 本店
<編集部コメント>
阿蘇の名物「あか牛丼」は、お肉の旨味がギュッとつまっていて、くつざわさんもペロリと完食。とっても心温かい店主のお父さんとのコミュニケーションも、旅に出たからこそ出会えた素敵な思い出。

スポット名エルパティオ牧場
<編集部コメント>
阿蘇五岳、九重連山、祖母傾連山を眺めながら乗馬体験ができる、まるで海外のようなロケーション!全力で出迎えてくれる、たくさんのワンちゃんたちにも癒されます。

スポット名湯あかり(黒川温泉)
<編集部コメント>
温泉街にふわりと灯がともる、幻想的なライトアップ。自然に溶け込む光が、心と体を異世界に連れて行ってくれます。※期間限定の催しです。詳細はホームページをご確認ください。

スポット名パラグライダー 熱気球体験 阿蘇ネイチャーランド
<編集部コメント>
くつざわさんが気球体験をしたスポット!朝日が昇る瞬間を気球の上から眺める…そんな人生で一回あるかないかの貴重な体験ができます。他にもパラグライダーやモーターマウンテンなど、アクティビティが充実!

スポット名大観峰
URLhttps://kumamoto.guide/spots/detail/211(熊本県観光サイト)
URLhttp://www.asodaikanbou.com/(阿蘇大観峰茶店)
<編集部コメント>
360度の大パノラマが楽しめるビュースポット!映画のワンシーンのような雄大な景色が目前に広がり、「なんだか今年は良いことが起こりそう…!」そんな予感に包まれる、超絶景です。
熊本・阿蘇の旅、みなさんもぜひ体験してみてくださいね🚄