瞬間を切り取ったかのような没入感の高い作風が支持され、SNSでも多くのフォロワーを抱える写真家・増田彩来さん(21)。全ての都道府県はほぼ行き尽くした大の旅好きでもある増田さんが今回、プライベートでも親交のある同世代の俳優・上原実矩さんと長崎・佐賀をめぐる旅に出かけました。街の空気感や味覚、人々とのふれ合い……。増田さんはその魅力をどのようにレンズに収めたのでしょうか。前回の長崎編に続いて、佐賀編をお届けします。
長崎編はこちら。

増田彩来(ますだ・さら)
写真家 / 映像作家
2001年生まれ。21歳。東京都出身。
静止画の中に「動」を残すことを大切に、その瞬間を閉じこめたような写真が魅力の写真家。2020年、20歳になる節目のタイミングで個展「écran(エクラン)」を開催し、2023年1月にも写真展を開催予定。現在は、自主制作映画やMVの監督を務めるなど、映像作家としての活動も注目されている。

上原実矩(うえはら・みく)
俳優
1998年生まれ、東京都出身。俳優・モデル。
メジャー、インディペンデント問わず多くの映画に出演。近年の出演作は「青葉家のテーブル」(2021年、松本壮史監督)、「余命10年」(2022年、藤井道人監督)、「流浪の月」(2022年、李相日監督)など。
初めて長編映画で主演を務めた「ミューズは溺れない」(2022年、淺雄望監督)では高校生役のみずみずしい演技を高く評価され、第22回TAMA NEW WAVEでベスト女優賞を受賞するなど、今注目を浴びる俳優の1人。
和多屋別荘 西九州新幹線で行く「日本三大美肌の湯」

長崎の街をたっぷり堪能したあとで、JR長崎駅に到着。2022年9月に開業したばかりの「西九州新幹線かもめ」に乗って佐賀県の嬉野(うれしの)温泉駅に向かった。
旅の前に移動手段を調べていたら、西九州新幹線を使えば、長崎から嬉野温泉までは、わずか25分。移動が楽になったって知ってラッキー!
嬉野温泉駅に着いたら、目の前に足湯を発見。
温泉地ならではの歓迎にテンションが上がって、迷わず足を浸してみた。
ちょうど人肌くらいの温度のまろやかな温泉が足をつつみこんで気持ちいい〜!
座ってじっくり足湯を楽しみたいけれど、今日の宿へ行かなくちゃ。

今日の宿は、和多屋別荘。
天井が高く美術館のように落ち着いた雰囲気のフロントでチェックインを済ませて、大きな五本松と池がある日本庭園、月を観賞するためにつくられた月見台、月や星空を眺めながら楽しめる足湯を横目にしながら部屋に向かう。
部屋に行くと館内着の浴衣(ゆかた)が置いてあった。
なかなか着られないし、せっかくだから着替えてみる。
鏡に映る自分の浴衣姿が新鮮で、
照れくさいけれど、なんかいつもより大人っぽく見えるかも。
着替えたらちょうど夕食時。優雅な館内を眺めながら食事処へ移動する。

夕食は、佐賀米や佐賀牛、嬉野市の隣の武雄市の農家だけが生産する地域ブランド豚肉「若楠(わかくす)ポーク」、佐賀県で採れた旬の野菜や海の幸などを使った会席料理だった。
佐賀県のごちそうを余すところなくいただけるメニューに胸高鳴る〜!さっそく乾杯!

めったに着ることがない浴衣に、ワイングラスも目新しい。
グラスの扱いにドキドキしつつ、「いただきます!」
「ん〜! おいしい!」

「旅行に来れば、ふだんは着ない浴衣も、ワイングラスも、会席料理も、一気に楽しめておトクだね」
旅に来て、気持ちが解放的になって、よくしゃべるようになった。
美味しいごはんも、浴衣を着ることも、ワイングラスでお酒を飲むこともうれしいけれど、
こうやってたくさん会話をしてどんどん絆が深まることもうれしい。
「ひとつひとつやろうとすると、結構お金かかるよね」
こんなリアルなお財布事情も話しつつ、
今回の旅ではやりたいことを最大限に実現し尽くせるよう調整してきたことを思い起こしていた。

夕食を食べ終わって、部屋に戻るとお待ちかねの温泉タイム。
人目を気にせずに嬉野温泉を堪能したくて、贅沢に温泉付きの部屋にした。
この部屋には、内風呂とテラスに露天風呂があり、どちらも源泉から直接注がれた嬉野の温泉が楽しめる。
自分の家の浴槽よりも何倍も大きなお風呂のなかで、
足をのばして、
両手を広げて、
上を見上げて「フ〜」と深呼吸。
実は、旅に来る前は悩みごとが頭から離れなかったけれど、
今はお腹が満たされて、全身があたたまった心地よさで気にならなくなっている。
「考えても何か変わるわけじゃないし、今を楽しんで帰ってからまた頑張ろう」
そう自然と思えるのは、旅にきたからだな。

「えっと、どこまで話したっけ?」
お風呂から出て、気づいたらうとうとしていた。
そういえば、まだ話の途中だった。
たくさん話して、そして、たくさん聞いて。
いつもなら話さないことも、旅だとどんどん話したくなるフシギ。

話していたら、またいつの間にか寝てしまって、窓から入る朝日の光で起きた。
テラスに出てみると、太陽に照らされた露天風呂の水面がキラキラ光ってまぶしい。
足をお湯につけながら光っている水面を眺めて、頭が起きるのを待つ。
ふだんは朝起きたらバタバタと出かける準備をするから、朝の時間をのんびり過ごせるなんてとても贅沢だ。

いよいよ旅の最終日になってしまった。
今日はまわりたいところがたくさんあるから、サクッと朝食を食べて出発!
Yohaku Lab創香室 旅の思い出を香りにしてみた

和多屋別荘の中には、「自分だけの香り」のフレグランスバッグがつくれる「Yohaku Lab創香室」がある。旅の思い出を香りで持ち帰るのもなかなかおしゃれだなと思って、楽しみにしていた。
白檀(ビャクダン)、桂皮(ケイヒ)、ラベンダーなど、数種類ある天然の粉末状の香料を自分のインスピレーションで混ぜ合わせてオリジナルの香りをつくる、貴重な経験。
ラベンダーベースのお気に入りの香りがつくれて、大満足!
新日本製陶 創業150年の窯元で茶香炉の絵付け体験

旅に来る前に佐賀県のことを調べていたら肥前吉田焼という陶磁器の産地であることを知った。佐賀にはたくさんの窯元(かまもと)があって、そこでつくられたお皿やマグカップなどが全国へ出荷されているという。

150年続くという窯元の新日本製陶では、初心者でもできる絵付け体験をやっているという。長く使える旅の思い出の品も良いなと思ってチャレンジしてみることにした!
お皿やカップ、茶香炉などなどいろんなものに絵付けができる。茶香炉をセレクトしてみた。


絵付け体験は茶香炉にそのまま絵を描くのではなく、お花や模様が描かれた和紙を貼り自分好みにデザインしていくもの。
茶香炉の上に絵付き和紙をのせて、水に濡らした筆でなぞるとそのまま模様がついた。
絵心に自信が無くてもできるから、ちょっと安心!
慣れるまでコツが必要だったけれど、「この模様もどう?」「青を入れるとキレイだよ」って、お店の人が親切に教えてくれるから、どんどん見た目が華やかになって自分好みの模様が完成!
絵付けをしたら、そのまま持ち帰るのではなく、いったんお店の人に預ける。お店の人が窯で焼いて仕上げてくれて、完成品を指定場所に送ってくれる。持って帰らなくてよいから楽だな〜。
どんな風に焼きあがるのか出来上がりが楽しみ。
あ〜思い出つくりに没頭してたら、お腹がすいた!
佐賀は、大豆の産地でもあるからお豆腐がおいしいらしい。
お昼は湯豆腐にしよ!
佐嘉平川屋 極上の温泉湯豆腐鍋とスイーツを堪能


佐嘉平川屋の湯豆腐は、嬉野の温泉水と同じ成分でできた調理水で煮る温泉湯豆腐鍋だった。
お鍋のなかでグツグツ煮込まれたお豆腐は、ゆっくり崩れて溶けてふわふわな食感。
ふわふわな湯豆腐は、そのまま食べても大豆の甘さがあって美味しい。


鍋の中で豆腐が完全に溶けたら、それを出汁に野菜と雑炊をいただく。
最初は「お豆腐でお腹いっぱいになるかな?」って思ったけれど、食べ応え十分!
ご飯もしっかり食べたけれど、やっぱり欠かせない甘いもの。
お店の人に、「自家製豆乳をたっぷり使った豆乳ソフトクリームと豆乳もち、豆乳白玉の3つの味を楽しめるパフェがおいしいよ」っておすすめされたから、それをオーダー!


豆乳もちって想像がつかなかったけれど、美味しくてびっくり!!
控えめな甘さでちょっと粘り気があってクセになる食感。その上にソフトクリームや黒蜜がかかっていて、一緒に食べるとも〜たまらん!
豆乳もちは、入り口でお土産としても売っていたから友達に買って帰ろう。
友達にとか言って自分で食べそうだけど。
よく知っている顔の「知らない表情」に出会えた旅


博多駅に着いて、新大阪に向かう新幹線の出発時間ギリギリまで、駅構内のお土産売り場を回る。こんなに楽しい時間が終わるのがさみしくて、直前まで旅を味わっていたい。

2泊3日の旅ももうすぐ終わる。
どんなに仲が良くても、2泊を共にするとさらに仲が深まるって身をもって感じた。
たくさんの彼女らしさを体感できたし、意外だった一面を垣間見ることもできた。

きっと自分も同じように相手にとって意外な一面や個性を見せているんだろうな。
自分をさらけ出すって勇気がいることだけれど、良いところも悪いところも知っているから、そこから生まれる絆は濃く、深く、大切になる。

「次はどこへ行こうか」
次の旅の候補を話していると、帰り道もあっという間に過ぎた。
(構成・文 玉絵ゆきの)
武雄温泉駅と長崎駅とを結ぶ 「西九州新幹線」が2022年9月23日に開業しました。在来線の特急と西九州新幹線に乗り、博多駅と長崎駅の間はこれまでより最大で30分も短くなります。
新大阪駅と博多駅の間は「山陽新幹線」で。そして、ますますアクセスが良くなった佐賀と長崎への旅を検討してみませんか。
◆旅のスポット情報
○和多屋別荘
https://wataya.co.jp/
○Yohaku Lab 創香室
https://wataya.co.jp/facility/yohaku_sokoshitsu
○新日本製陶
https://peraichi.com/landing_pages/view/shinnihonst/
○佐嘉平川屋 嬉野店
https://saga-hirakawaya.jp/brand/