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特集 2020年1月号
春風に誘われて ニッポンさくら旅

次々に緑が芽吹き、やわらかな日差しに心が和らぐ頃、ついに桜の季節の到来だ。今年はどの桜を訪ねるか、ひと足お先に旅の計画を始めよう。いざ、桜の名所の数々へ。
花ひとひらに歴史薫る古城の桜
「日本三大桜の名所」のひとつ、長野県伊那市の高遠城址公園(たかとおじょうしこうえん)。かつては諏訪氏の支族・高遠氏の居城であり、武田氏が伊那侵攻の拠点としたことでも知られる高遠城が、1871年の廃藩置県で城が取り壊され、1875年に公園となった。旧高遠藩士たちが桜の馬場から桜を移植したことに始まり、今では桜を鑑賞しに毎年大勢の人が訪れる。
4月上旬~中旬になると、園内では約1,500本のタカトオコヒガンザクラが華麗に花開く。「天下第一の桜」と称されるこの桜は、高遠城址公園にしか咲かない唯一無二の品種。薄紅色で小ぶりの花が枝いっぱいに咲くのが特徴で、可憐さと華やかさを兼ね備えている。園内の至るところで桜の花に出合えるが、特に人気なのは太鼓橋「桜雲橋(おううんきょう)」。桜が橋の周りを埋め尽くすほど見事に咲き誇り、まるで全身が桜に包まれたような感覚を味わえる。昼とは違った表情を見せる夜桜ライトアップもおすすめだ。
高遠城址公園は南アルプスの裾野に位置し、遠くにアルプスの山々などを望む絶景スポットでもある。桜雲橋で目の前に広がる桜を堪能したら、遠景の桜も楽しみたい。加えて国の登録有形文化財に指定されている高遠閣をはじめ、城下から移築された問屋門、太鼓を打って時を報じる太鼓櫓など、歴史の面影が偲ばれる建築群も魅力的。暖かな風を感じながら、豪華な春景色を訪ねよう。
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眼前いっぱいに桜が咲く桜雲橋 -
桜と雪景色のアルプスが連なる壮大な眺望 -
桜が夜空に浮かび上がる幻想的な夜桜も魅力 -
プロジェクションマッピングが幽玄の世界を演出
瀬戸内海に浮かぶ “桜の島”

桜の島で出合う新しい春
広島県三原市の三原港からフェリーで約25分、到着するのは芸予諸島(げいよしょとう)のひとつ、佐木島(さぎしま)だ。温暖な気候と豊かな自然に恵まれた瀬戸内海の島で、“日本一新幹線駅から近い島”といわれるほどアクセス良好。“みかんの島”としても知られている。
佐木島で過ごす春の楽しみ方は、ウォーキングやサイクリングでめぐる島散策。まずは島の南側、小高い山一面に桜が咲く名所「塔の峰千本桜」へ向かおう。3月下旬~4月上旬に1,000本以上の桜が次々に開花し、山肌がピンクに染まる様は圧巻。そのまま山へ足を踏み入れると、桜のトンネルが山頂へと続く。空を覆いつくすようにのびのびと咲く桜を愛でながら、穏やかな春の陽気を一身に感じられる道のりだ。山頂では、満開の桜越しに瀬戸内海の絶景が広がる。散策で温まった身体をクールダウンしつつ、心ゆくまで大パノラマを味わおう。日々の喧騒を忘れ、桜に包まれながらのんびりと自然を満喫できる。
桜が特に有名な佐木島だが、ほかにも魅力は数多い。散策中、海の向こうにしまなみ海道や因島、生口島を見つけたり、チューリップや菜の花といった花々に癒やされたりと、何気ない風景の中に心惹かれるものがある。自分なりのお気に入りの春を探してみてはいかがだろうか。
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「塔の峰千本桜」は遠景と近景どちらも楽しみたい -
風に揺られる可憐な桜に魅せられる -
どこか郷愁を感じさせるのどかな風景 -
みかん畑に出合えるのも瀬戸内らしい瞬間
桜が彩る 生口島(いくちじま)の耕三寺

薄紅色に染まる究極の建築美
広島県・佐木島の南隣に浮かぶ生口島では、「耕三寺博物館」に訪れたい。敷地内には浄土真宗本願寺派寺院の耕三寺やその展示館・金剛館が建つ。大阪の元実業家・耕三寺孝三氏が、母の死後に慈母への報恩感謝の思いを込めて自ら僧籍に入り、菩提寺として1935年より耕三寺を建立したという。日本各地の古建築を模して建立された煌びやかな伽藍は、「西の日光」と名高い。
大きな見どころは、5,000平方メートルにもおよぶ白い大理石の庭園「未来心の丘(みらいしんのおか)」。世界的彫刻家・杭谷一東(くえたにいっとう)が手掛けた、大小さまざまな形をした大理石のモニュメントがそびえ立ち、独特な存在感を放っている。細部に至るまで周囲の自然との調和を考慮して創造された庭園は、杭谷氏の傑作だ。3月下旬~4月上旬に見頃を迎えるソメイヨシノやカワヅザクラなどの桜が、青空のもと白く輝く大理石に映え、美しい色彩を奏でる。この機会を逃さず、春ならのではの光景を堪能したい。
そのほか、極彩色の装飾が施された本堂や、境内中段の中央に建つ迫力ある五重塔(大慈母塔)などの豪華絢爛な伽藍も必見だ。
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桜と大理石のコラボレーションが珍しい「未来心の丘」 -
奈良県室生寺の五重塔を原作とした五重塔(大慈母塔) -
伊豆里峠から見た穏やかな瀬戸内海の風景 -
現代アート作品のひとつ、瀬戸田サンセットビーチの「空へ」眞板雅文