【2022年8月31日】
旅の楽しみは人それぞれですが、ここ数年の社会情勢の影響もあり、旅行への価値観も少しずつ変わりつつあるようです。 それでも本音は「やっぱり旅に出たい!」「旅先で感動を味わいたい!」。そんな今だからこそ求められている旅とは一体どんな旅なのでしょうか? 旅のプロであるクラブツーリズム(株)関西テーマ旅行センターの皆さんにお聞きしました。



高まる旅への欲求。
キーワードは“テーマのある旅”
「最近はよりお客さんの志向もハッキリしてきていて、テーマ性もハッキリした、より趣味に特化したようなツアーを買っていただける傾向がありますね」 と語るのは、チーフリーダーの藤田さん。もちろん、人が集まる定番スポットをめぐる物見遊山的な旅もありますが、より趣味や明確な目的を持って旅をしたい方が多くなっているそうです。

コロナ禍を経ての変化はどうでしょうか。リーダーの栗田さんは「家から出かける機会が減っても、インターネットや本などを通じて旅の情報に接することはできます。 でも、やっぱり現地に行かないとわからないものがある。地元の方と話しをしたりとか、知らなかった景色に会ったり、知らなかったものを食べたり。そういう欲求がさらに強まった気がしますね」と分析します。

リーダーの田岡さんは、インスタグラムなどSNSが旅の動機のひとつになっていることを踏まえつつ、「個人でも旅には行けますが、専門ガイドの解説付きとか、 旅行会社を通してでないとできない体験とか、食事とか、ツアーに参加するメリットを見つけていただければ嬉しいですね」と語ります。

まだまだ何かと気を使う場面も多いご時世ですが、旅の形態も屋外でハイキングや、おひとり様参加ツアーなど、旅行会社としても社会情勢の変化を見ながら、工夫を重ねているそうです。 そんな藤田さんたちのチームが取り組んでいるのが“テーマ旅”。定番の観光地をめぐるだけではなく、ひとつのテーマに沿って興味や学びを深掘りしていくツアーを組み立てるという旅の考え方です。
九州の旅、
やっぱり温泉は外せない!
第1回は、九州エリア(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県)への旅についてお話をお聞きしました。
一概に九州といっても、風土や土地柄も地域差があるのですが、「全般的にはやはり暖かいので、冬場やお正月にはメインに考えたい旅先ですね。 あとは、温泉が海沿いにも山の中にもある。温泉は外せないかなと思います」と藤田さん。
確かに九州といえば、別府や湯布院(大分県)、黒川(熊本県)、雲仙(長崎県)、指宿(鹿児島県)など有名温泉地がめじろ押し。 藤田さんからは「個人的には…」という前置きで通好みの温泉地の名も。「黒川温泉は有名ですが、その周辺にも名前の知られていない魅力的な温泉地がいっぱいあるんです。 温泉や秘湯好きの方にはぜひおすすめします。阿蘇にある『地獄温泉(熊本県)』なんかは、もうお湯がドロッドロなんですよ」。
別府に詳しいという田岡さんは「泉質の種類がたくさんあるのも九州の温泉の魅力ですね。別府八湯などはそれぞれで違いますよ」。 さらにコロナ禍で需要が増えたというのが、温泉地に1週間連泊してのんびり長期滞在するツアーだそう。「一箇所に滞在する事で、暮らすように楽しめるということもあり、 結構長期滞在の需要が増えてきているんです」。

【 おすすめの商品はコチラ 】
見逃せない!
西九州新幹線開業
「旅のテーマとして歴史という切り口は、どの地域にもありますが、九州で独特なのは教会とかキリスト教。 逆に九州くらいしかキリシタンがテーマの旅は難しいのでは?」と藤田さん。さらに藤田さんは、ツアーを作るにあたっては『旬』を逃さないことを大切にしているそうです。 「旅行にもやっぱり旬があると思います。新しく鉄道が開通するとか、何十年に一度のご開帳があるとか。そこは逃さずツアーに設定するようにしています。皆さん、やっぱりその時だからこそ行きたいですから」。
この秋9月23日には西九州新幹線(武雄温泉~長崎)の開業が控えます。水戸岡鋭治氏が車両デザインを手がける新しい新幹線が長崎までつながるという、まさに『旬』のタイミングです。
私どもとしては、西九州新幹線とキリシタンの歴史を組み合わせた長崎・熊本へのツアーを作りました。 キリシタンは少し異質な歴史ですが、遠藤周作さんのファンの方も結構いらっしゃいますし、ニッチ過ぎず、マニア以外の方も興味を持っていただけるテーマかなと思います」と藤田さん。 弾圧など、見る人の感傷を誘う歴史ではありますが、今この時代だからこそ、私たちの胸に響くのではないでしょうか。

【 おすすめの商品はコチラ 】

九州は石の文化にも注目
キリシタン関連の旅先は九州の西側に集中しますが、「寺社仏閣をテーマにするなら大分県など九州の東側ですね。 国東半島の磨崖仏とか」と藤田さん。絶壁に彫られた仏様が圧巻のスポットです。さらに栗田さんからはこんなご指摘も。 「九州には石の文化もありますね。院内の石橋群(大分県)ですとか、通潤橋(熊本県)とか」。九州各地で見られる石造りの橋などに注目するのも、旅の興味につながるのではないでしょうか。
ここで田岡さんからさらなる“石”情報が。「石の文化にも通じますが、九州には日本百名城に選ばれている城が13あります。 一番有名な熊本城だけでなく、たとえば岡城(大分県)などは本当に石垣が見事な城で、実際に立ってみると圧巻の高さなんです。どうやって積んだの?って感じですね」。
城郭は東日本では土の城、西日本では石垣の城という傾向がありますが、特に山陰から九州にかけては石垣の名城が多いのだそう。 「吉野ヶ里遺跡(佐賀県)も城のひとつですし、さらには古代朝鮮の影響を受けた大野城(福岡県)、秀吉の名護屋城(佐賀県)など一気に日本の城の文化を見られる6日間のツアーも作りました」。 ちなみに山道を登り降りする城は、九州ならば11月ごろがベストシーズンだそうです。

観光列車が楽しい!
移動手段も旅
藤田さんは、九州ならではの旅の楽しみがあると言います。 「九州は特に観光列車が多いんです。たとえばJRの『或る列車』や『指宿のたまて箱』、肥薩おれんじ鉄道の『おれんじ食堂』など。 こうした観光列車を乗り継ぐツアーなども作っています。団体列車もあって個人ではなかなか組み立てにくいので、鉄道目当てならばツアーを選ぶメリットは大きいと思います」。
移動手段そのものを楽しむのも、テーマ旅のひとつ。「観光列車もそうですし、実はローカル線に乗りたいというお客様もいらっしゃる。 少しだけローカル線に乗ってみて、普段の地元の人の足として使われている雰囲気を味わいたい…そんな価値観も出てきていますね」。 より速く、より効率的に回ることよりも、あまり旅程を詰め込みすぎず、じっくりと余白を楽しむ旅が見直されつつあるのかもしれません。
九州は鉄道だけでなく、壱岐、対馬、五島列島(いずれも長崎県)など船に乗って行ける離島も魅力的な旅先だと藤田さん。 さらには島原半島から熊本市や、天草への航路もあります。「西九州新幹線で長崎に行って、雲仙や島原を経由して熊本で泊まれ、帰りは九州新幹線…なんて乗り継ぎルートも結構使えると思いますよ」。
焼き物にお酒、地域文化満載!
西九州新幹線の現時点での東の起点になるのが佐賀県です。佐賀にはメジャーな観光地はあまりないと思われがちですが、「そんなことはないですよ。 紅葉の季節に期間限定で公開される九年庵とか、紅葉の名所が佐賀周辺には結構多いんです。それから焼き物も有名ですね。有田焼とか。秋にはちょうど陶磁器まつりもあります。 特に50代以上の世代だと、焼き物をご案内すると結構喜ばれますね」と藤田さん。

さらには一同「佐賀といえば、呼子のイカ」と、ご当地グルメのオススメも。 「やっぱり九州の食文化の中で、喜ばれるのは海産物ですね。天草の方も美味しいし、大分の豊後水道なら関アジ関サバとか。地域によっても違います」と藤田さん。
田岡さんの九州でのオススメは焼酎。「その土地の食べ物と地域のお酒を一緒にいただくと格別です。お店の人が教えてくれたりしますよ。 熊本なら“辛子蓮根に合うのはこの焼酎だよ”とか“馬刺しには絶対辛口の方が美味しいよ”とか。 タクシーの運転手さんや駅員さんに教えてもらったこともありますね」。食が地域の方々との会話の接点になることも多いそうです。

九州はどの県を訪ねても独特の地域文化が満載。テーマを決めて旅をすれば、深掘りのしがいのあるエリアではないでしょうか。
【 おすすめの商品はコチラ 】
