【2022年9月13日】
旅の楽しみは人それぞれですが、ここ数年の社会情勢の影響もあり、旅行への価値観も少しずつ変わりつつあるようです。それでも本音は「やっぱり旅に出たい!」「旅先で感動を味わいたい!」。そんな今だからこそ求められている旅とは一体どんな旅なのでしょうか?旅のプロであるクラブツーリズム(株)関西テーマ旅行センターの皆さんにお聞きしました。



旅の中心はやはり京都!
旅のテーマも多彩。
最終回となる第4回は、近畿エリア(滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県)への旅についてお話をお聞きしました。
このエリアは、お3方とも「やはり京都が中心」と口を揃えます。歴史スポットや神社仏閣はもちろん、美術工芸、名建築、そして京料理をはじめとする食文化。「京都には何でもありますよ」と栗田さん。首都圏やその他エリアから来る方々のお目当ては、やはり京都が一番多いそうです。
「ツアーを作るにあたってもいろんな切り口があって、テーマが深掘りしやすいので、京都は外せないところ」と藤田さん。京都を軸として、同じく寺社の多い奈良や滋賀と合わせるツアーなども割と多いそうです。
京都や奈良には、以前はオーバーツーリズムと呼ばれるほど外国人観光客が殺到する観光地もありました。しかしコロナ禍を経て、「インバウンドがほぼゼロになっています。人気観光地も減った外国人の分だけ見やすくなっているかもしれません」と藤田さん。「あとはホテルの料金ですね。インバウンドが多かった時はかなり高くなっていたのですが、その時と比べればそれほど高くはなく、動きやすい要素とは言えますね」。
京都を訪ねるならば、外国人が少ない今がチャンスかもしれません。

年に一度のご開帳!
滋賀で秘められた仏様と会う
「京都や奈良の観光寺院のような華やかさはないかもしれないですが…」と、田岡さんが薦めるのは、滋賀の素朴な信仰風景。「滋賀県北部の奥びわ湖には、年に一度だけ一斉にご開帳される十一面観音様や千手観音様がたくさんいらっしゃいます」。集落の人たちが当番で鍵を預かって守ってきた仏像たちで、「住宅街を入っていって拝むものもあります。それがすごいきれいなお顔をされてたり、息を飲むような美しさであったり…」。一斉公開される20数か所の中から6か所を厳選したツアーは、関西だけでなく東京からの参加者があるほどの注目ぶりだそうです。
「期間限定ということなら、紅葉の時期に大型バスが入れない隠れた名所に、小型バスを使って行くツアーなどもやっておりまして。おにゅう峠(滋賀県)ですとか、行者還林道(奈良県)はたぶんあまり知られていないスポットだと思います」と藤田さん。
紅葉といえば、近年はSNSがきっかけで話題になる場所も。「紅葉が床や水面にきれいに映る写真が撮れると、インスタグラムで爆発的な反響があった京都の祐斎亭というギャラリーとか。そこに行くツアーも組んでみています」と田岡さん。SNS時代を迎え、旅先のトレンドも刻一刻と変わっているそうです。


奈良は根強いファン多し。
限定公開も見逃せない!
古都・奈良も旅先として魅力があると言う藤田さん。「“奈良好き”の方って結構いらっしゃっるんです。そういう方は奈良ばかり行かれている印象です」。ツアーのテーマは古墳系が多いとのことで、「明日香村のキトラ古墳などは、特別公開に合わせたツアーを組むと結構な需要があります」。四神を描いた極彩色の壁画は常時公開されておらず、公開日も見学定員も限られいるという貴重な国宝。レアな機会だからこそ、現地ガイド同行のツアーならばより一層興味や学びを深掘りできるそうです。
「今しか見られない場所ですと、旧奈良監獄というところがあります。明治時代から現存する煉瓦建築で、今後ホテルに改装されるんですが、この秋が改装前の姿が見られる最後のチャンスということでと問い合わせが多いですね」と藤田さん。実はこちらの場所は人気男性アイドルグループの映画のロケ地となったことでSNSで話題になったのだとか。
そうした映画やアニメの舞台地めぐりは、若い世代を中心に“聖地巡礼”とも呼ばれますが、「年輩の方なら、ウォーキングや山歩き、街道歩き、サイクリングも人気がありますね」と藤田さん。旧奈良監獄の見学を含むハイキングコースなどもあるそうです。

注目の観光トレインで
南紀へGO!
数々のツアーを手がける藤田さんには、注目の観光列車があるそうです。「自分が一番おすすめしたのは『WEST EXPRESS 銀河』ですね。2020年春から運行されている観光列車で、まだまだ新しいということも魅力。また、JR西日本さんでは『瑞風』ほどハイクラスではないけれど、値段的にはそこそこカジュアルで、なおかつラグジュアリーな魅力も楽しめます」。
藤田さんたちが作ったツアーでは、特別貸切の『WEST EXPRESS 銀河』に乗車して和歌山県へ。那智の滝や熊野古道、橋杭岩、新宮鉄道の廃線跡歩きなど、南紀の名所や鉄道スポットをめぐる3つのコースを用意しているそうですが、「行き先ももちろん重要ですが、列車に乗ること自体を目的とするニーズの方が大きいかもしれません。それほど魅力のある列車なんです」。
近年はJR、私鉄ともに乗車自体が目的になる観光列車が増えてきており、鉄道は「目的地まで速く、効率的に移動する交通手段」だけではないという、価値観の変化が感じられるそうです。

京阪神は美食の都。
建築にも注目!
食文化の面ではどうでしょうか。「美食系のツアーで多いのは、やはり京都の料亭さんですね」と藤田さん。「一見さんお断りとまでは言いませんが、個人ではなかなか入りにくいようなところも、ツアーなら行けますので」。特にご夫婦2人だけ、おひとり様などは敷居を感じがちですが、それがパンフレットに載っていると行きやすくなるという反応が多いそうです。
「美食ですと神戸も人気です。フレンチ、イタリアン、隠れ家レストランや、有名シェフが作る何々料理とか、そういったツアーがよく出ます」と田岡さん。大阪にも明治初期から続く料亭などがあり、京阪神には歴史ある食の名店が多いそうです。
また、店構えや建築も注目ポイントになります。「すごいお庭があったり、昔の何々家住宅を改装してレストランにしたとか、そういった由緒ある建物だとお客様も喜ばれますね」と藤田さん。たとえば、登録有形文化財の洋館でフレンチをいただいたり、元皇族の別邸だった料理旅館で京会席を楽しむコースなども作っているそうです。
「それから、近畿北部に行けば冬場はカニですね。香住や城崎(兵庫県)や、間人(たいざ/京都府)など。あとは、秋には丹波の松茸もあります」と栗田さん。
古代から都が置かれた近畿地方は、長い歴史の中で一流の文化が磨き上げられてきた“ほんまもん”に出会えるエリアです。

