【2022年10月13日】
いまだ制限のある日常が続くなか、ますます「旅に出たい!」という思いを募らせている方も多いのではないでしょうか。九州~中国~北陸の各地には、皆さんを待っている素敵な風景や美味しい食べ物、魅力的な観光地がたくさんあります。2022年の今だからこそおすすめしたい旅先はどこか?全国を飛び回り日々旅行を企画する旅のプロフェッショナル・(株)読売旅行の関西企画グループ 大阪企画チームの方々にお話をうかがいました。



そこに行く理由こそが、旅の魅力
数々のツアーを手がける植田さんは、日常から飛び出せるのが旅の魅力だと言います。「コロナ禍で皆さん2年以上閉じこもりがちになっていますので、日常から出たい、見たことのない風景に出会いたいという声はより大きくなっていると感じます」。そして、「日常が煮詰まってしまっていると感じる方が多いからこそ、旅先で安らぎたい、非日常な体験をしたいと思う傾向は、ますます強まっているのではないでしょうか」。

「旅の魅力は“今だけ”“ここだけ”があること」と語るのは、関西企画グループの中西さん。「たとえば冬に北陸へカニを食べに行きたいとか、真冬に南九州へ行って一面の菜の花畑を見たいとか。旅には“そこに行く理由”が人それぞれにあると思いますが、それこそが旅の魅力になると思います」。なぜそこに行きたいのか?いつ行きたいか?…そんな理由付けが旅の魅力につながるのだと言います。

現在の旅のトレンドについて植田さんは、「ワンランク上の商品やホテルが人気になっています」とのこと。これは旅行支援の助成金の関係もあるのだとか。また、グループ旅行は少人数化し「他人に迷惑をかけないように」と他人同士よりも夫婦2人…という傾向が続いているそうです。
中西さんが考える旅のトレンドは、「やはり西九州新幹線『かもめ』のデビューですね。むしろ我々がトレンドにしたいと思っています」。他にも『WEST EXPRESS 銀河』や『SAKU美SAKU楽』などJR西日本の観光列車を注目ポイントとして挙げていました。
九州の魅力は海と山。
そして、今こそ見てほしい風景
「第1回で取り上げるのは、九州エリア(福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県)。主に九州のツアー商品を担当している中西さんにお話しいただきました。
中西さんは九州の魅力について、「端的に申しますと、海と山」だと言います。「それでこの秋は、山海浪漫パノラマルートというツアーを作りました」。中西さんが秋のイチオシと言うこちらのツアーは、耶馬溪(大分県)や阿蘇(熊本県)、高千穂峡(宮崎県)など山の名所と、天草五橋クルージング(熊本県)で海の絶景を堪能するプラン。
「宿泊は山の宿としては筋湯温泉(大分県)。看板犬のエンジェル君が話題になっているお宿です。海のお宿は天草松島温泉(熊本県)で、山の温泉と海の温泉両方を楽しめます」。九州は山にも海にも温泉が湧きますが、ロケーションや泉質など、それぞれに違う個性を楽しめるのも魅力です。

観光列車でゆったり!
シニアにおすすめ由布院・黒川
中西さんは、九州は鉄道の移動そのものが旅する理由になると言います。「由布院温泉(大分県)と黒川温泉(熊本県)に泊まり、阿蘇や高千穂をめぐるツアーがあるのですが、このツアーには少し特長がありまして。1日目は博多から人気観光列車の『ゆふいんの森』に乗って、由布院温泉のホテルまで移動するだけなんです。温泉地に早めに着いて、思い思いのんびりしていただきます」。
“ただ移動するだけ”にしないためには、どんな列車に乗車するかが大切です。JR九州には『ゆふいんの森』の他にも『あそぼーい!』や『A列車で行こう』『指宿のたまて箱』など、乗ること自体にワクワクできるD&S(デザイン&ストーリー)列車が多数あり、中西さんたちはこれらをツアーの中の楽しみとして組み込んでいくそうです。
由布院温泉や黒川温泉は、いわば定番の旅先ですが、「人生の先輩であるシニア層の方々におすすめしたいのは、原点回帰してゆったりと過ごせる由布院・黒川ですね」と中西さん。「私個人の考えですが、旅の原点は日々の喧噪を忘れてのんびりくつろげること、心を解き放つことなのではないかと思います」。王道の温泉地だからこその安心感は、大きな魅力。実際に九州エリアでリピート率が高いのも、由布院・黒川なのだそうです。


真冬のおすすめは南九州!
美味しい魚にも注目
「秋の主力となるツアー商品は由布院・黒川ですが、これが冬になってくると南九州になります。鹿児島県ですね。暖かい南国というイメージがありますから。池田湖に日本一早い菜の花を見に行きましょう、ということになるんです」と中西さん。池田湖は湖畔に菜の花畑が広がり、黄色い花の絨毯越しに開聞岳が見える絶景スポット。ひと足早く春の訪れを感じられます。ツアーでは、合わせて日本最南端の駅・西大山駅や指宿温泉の砂むし風呂など、南国を実感できるスポットを訪ねます。
「このツアーでも行きますが、仙巌園や知覧武家屋敷など、鹿児島の有名観光地は薩摩半島に集まっているんです。でも今、桜島から東へ、大隅半島に行くツアーができないかと考えています」。その理由をうかがうと、「とにかくカンパチが美味しいんです。ブリといえば北陸という印象もありますが、私は鹿児島・大隅のカンパチを推したいですね」。
釣りがご趣味だという中西さんは、先日大分の関アジを食べて感銘を受けたのだとか。「自分でもアジはよく釣りますが、大きいサイズは脂は乗ってるんですが歯ごたえはそこまでなんですね。ところが関アジは脂も乗って、歯ごたえも抜群。評判に違わぬ美味しさでした。プランクトン豊富な豊後水道で泳いで運動しているからしょうね」。海域ごとに個性豊かな地物の魚と出会え、それに合うご当地焼酎があるのも、九州を旅する楽しみのひとつです。
3年ぶりがキーワード?
佐賀周辺のおすすめスポット
中西さんは、“3年ぶり”が今年ならではのキーワードだと言います。「私の部署では福岡/博多はツアーの出発点になることが多く、あまり観光の目的地にはならないのですが、博多といえば祭りですよね。博多どんたくなどは、今年3年ぶりに開催されました。“3年ぶり”というのは、祭り以外でも出てきています」。
そのひとつが佐賀県の紅葉の名所・九年庵。毎年紅葉の期間に9日間のみ公開されていましたが、こちらも昨年、一昨年と2年連続で公開中止となり、今年は3年ぶりに公開される予定です。「これに合わせて、九年庵を含む九州の紅葉の名所をめぐるツアーを用意しています。大分の耶馬溪や熊本の菊池渓谷、福岡の秋月城跡などを3日間かけてめぐります」。
佐賀県といえば、西九州新幹線開通で注目が集まるエリア。「佐賀ですと、有明海の海中鳥居(大魚神社)や祐徳稲荷神社などをめぐり、呼子のイカを食べるツアーを作りましたね。個人的に好きなのは嬉野温泉です。ねっとりした感じの湯がたまらないですね。美肌の湯とうたわれているのも納得です」。
また、佐賀の新スポット情報も。「黄金の茶室ができました。肥前名護屋城です。豊臣秀吉の気分が味わえると思います」。忠実に復元された絢爛豪華な黄金の茶室は、名護屋城博物館で今年3月から公開されています。

非日常の世界へ!
ハウステンボス&長崎の夜景
長崎県では、ハウステンボスが年間を通じて人気の旅先だそうです。「今年で30周年。年代、性別を問わず人気ですね。収穫祭、クリスマスなど、季節に合わせたイベントも催されますので、どなたでも非日常な世界を楽しめると思います」。10月8日には30周年を記念した九州一の規模の花火大会を予定。このイベントに合わせ、西九州新幹線に乗ってハウステンボスに向かうツアーも用意しているそうです。
西九州新幹線の終着駅となる長崎では、ぜひ夜景を楽しんでもらいたいと言う中西さん。「夜景のおすすめは、断然ホテル矢太樓(やたろう)です。ここから見渡す長崎の夜景はまさに絶景です」。ホテルは高台の頂上にあり、坂を降りると坂本龍馬が結成した亀山社中跡が。中西さんはホテルに早めに到着し、あとは自由に散策できるツアーを作ったそうです。
「地元の言葉で散策のことを“さるく”と言いますが、今年のツアーでは“龍馬さるく”を楽しめるようにしています。歴史好きのシニア世代の方には、龍馬が歩いた場所を散策できるのは、やはり大きな魅力だと思いますね」。2日目は昭和の歴史遺産・軍艦島へ。グラバー園や大浦天主堂など、龍馬とゆかりが深い定番観光地もめぐることができるそうです。
西九州新幹線開通の年は、この秋~冬の1度きり。そんな今だからこそ、九州、特に佐賀・長崎方面を旅する理由があるのではないでしょうか。

※次回は、第2回【中国・北陸エリア編】をお送りします。
