【2022年11月15日】

長崎は日本初のキリシタン大名が誕生するなど、キリスト教に縁の深い土地。戦国時代からのキリシタン禁教令などの苦難を乗り越えて数多くの教会があり、日々たくさんの方の信仰を集めています。歴史的背景や建物の美しさから注目され、世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」にも登録されたものがある長崎の代表的な教会をピックアップして巡ってみましょう。
提供:
All About
※掲載情報は2018年8月30日にAll Aboutに掲載されたものをリメイクしたものです。
長崎観光で訪れたい。
歴史を重ねてきた美しい教会めぐり

宣教師フランシスコ・ザビエルが日本に伝えたキリスト教は、数多くの地域で広まりました。
その中の一つ、長崎は日本で初めてのキリシタン大名、大村住忠が誕生するなどキリスト教にゆかりの深い地です。戦国時代からのキリシタン禁教令などの苦難を乗り越えて数多くの教会があり、日々たくさんの方の信仰を集めています。
今回は歴史的背景や建物の美しさから注目され、世界遺産に登録されたものも長崎の代表的な教会をピックアップして巡ってみましょう。

日本唯一の国宝指定の教会、大浦天主堂
日本最古の現存教会建築

長崎の教会めぐり、最初は大浦天主堂です。長崎市内の観光名所としても知られる大浦天主堂は、江戸時代末期に造られた教会。正式名称は「日本二十六聖殉教者天主堂」であり、戦国時代に豊臣秀吉が発布したキリシタン禁教令により長崎で処刑された26人の殉教者に捧げられるために造られたものです。
国内に現存する教会建築の中では最も古く、教会建築としては唯一国宝の指定を受けています。

大浦天主堂が完成した当時はまだキリシタン禁教令が有効な時代でした。そんな中で、キリシタン禁教令による迫害を回避しつつ信仰をつないでいた隠れキリシタンの一部の人々が、完成してまもない大浦天主堂を訪れて、神父に信者であることを告白しました。
このことは「信徒発見」としてキリスト教の歴史に刻まれ、フランスから記念として白亜のマリア像が贈られました。現在は天主堂の入口で教会を訪れる人々を優しく見守っています。
この史実からキリシタン禁教の終わりを示す重要な施設として、2018年に登録された世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する資産の一つとされました。
原爆禍を乗り越えた浦上天主堂
美しいステンドグラスも

長崎の教会めぐり、続いては浦上天主堂です。長崎港の北側に位置する浦上(うらかみ)は、長崎でも早くからキリスト教が根付いた土地。1873年(明治6年)にキリシタン禁教令が解除された後、しばらくしてから小聖堂が建てられ、その後19年の歳月をかけて1914年(大正3年)に大聖堂が完成しました。

しかし1945年(昭和20年)の原爆禍により、爆心地のすぐ近くにあった大聖堂は一瞬にして瓦礫と化します。しばらくの間は瓦礫のまま残されていましたが、復興を期す信者らの活動により1959年(昭和34年)元の場所に再興したのが現在の浦上天主堂になります。
浦上天主堂の正面入口を見上げるとキリスト石像と聖マリア像、聖ヨハネ像が埋め込まれていることに気づきます。この聖マリア像と聖ヨハネ像は、原爆禍を免れた旧天主堂のものを埋め込んであるとのこと。歴史の重みを改めて感じますね。

教会の内外を彩る美しいステンドグラスも必見。各天主堂の物語が刻まれています。なお原爆禍で瓦礫と化した旧天主堂で、壊れずに残っていた遺壁の一部は、浦上天主堂から500メートルほど離れた所にある原爆落下中心地に移築されて残っています。浦上天主堂を訪れた時は、忘れずに立ち寄りたい所です。
長崎湾を望む白亜の教会、神ノ島教会

長崎港を出航する船は、稲佐山と風頭山、鍋冠山に挟まれた狭い水路を通り、女神大橋をくぐって長崎湾へ出ていきます。その長崎湾に出るあたりで少し高台にある白亜の教会が望めます。その教会が神ノ島教会です。

この教会は大浦天主堂に次いで、長崎市内で2番目に古い教会。長崎湾を背景にした教会の建物も絵になりますね。教会の近くの岬にはマリア像「岬の聖母」があり、目の前の長崎湾を行き交う船の航行の安全を日々祈っています。
続いては長崎市内を離れて、長崎県の北部にある教会を巡りましょう。
独特の色合いが記憶に残る
平戸ザビエル記念教会

サンフランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸した後、次に訪れたのは長崎県の北部にある平戸でした。平戸は南蛮貿易の拠点として栄えた島で、平戸島と隣の生月島には古くからたくさんのキリスト教徒が暮らしています。
平戸周辺にもたくさんの教会があり、平戸港の近くには1931年(昭和6年)に建てられた平戸ザビエル記念教会があります。緑色に塗られた外観は、一目見ただけで記憶に残りますね。建設された時は「カトリック平戸教会」と呼ばれていましたが、ザビエルゆかりの地の一つとして、聖堂の前にザビエルの像が建立されたため「聖フランシスコ・ザビエル記念教会」とも呼ばれるようになり、「平戸ザビエル記念教会」が正式名称となりました。
美しい海を望む高台に立つ田平天主堂

平戸島と九州本土の間には平戸瀬戸があり、真っ赤な平戸大橋ができるまでは船で行き来していました。その平戸瀬戸を望む高台に立つ教会が田平天主堂。1918年(大正7年)に造られた赤レンガの彩りが美しい教会です。2003年には国の重要指定文化財に指定されました。教会の敷地内の墓地の向こうには平戸瀬戸が見え、異国情緒を漂わせています。
※世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」では、生月島に近い平戸島の春日集落が構成資産に登録されて田平天主堂はエリア外となりましたが、キリシタン禁教に関連する大切な資産として見学には事前連絡が必要となっています。
九十九島、最大の島・黒島に残る黒島天主堂

佐世保の沖合、海の中に小さな島々が密集する九十九島。美しい風景を誇る九十九島の中で一番大きな島である黒島は、キリシタン禁教令により弾圧を受けた隠れキリシタンが多く移住した地です。
黒島には、明治時代に造られた赤レンガ造りの美しい黒島天主堂があり、キリシタン禁教時代での信仰を維持・拡大したことを示す痕跡が残っているとして、黒島の集落が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産に登録されました。1日3往復しか船便がない島のため、ゆっくりと時間をかけて訪れたい場所です。
※黒島天主堂の見学には事前連絡が必要です。
続いては五島列島の教会を巡りましょう。
五島で最初に造られた教会、
福江島・堂崎教会

東シナ海に面した長崎県は、壱岐(いき)や対馬(つしま)、五島(ごとう)など日本で一番多く有人島を抱える県でもあります。九州本土の西に位置する五島列島には、多くのキリスト教徒が暮らしたことから各地の島に教会が点在しています。 五島列島で一番大きな島、福江島にある堂崎教会(天主堂)は禁教令が解けた後、五島で最初に造られた教会です。明治時代初期より五島でのキリスト教宣教の拠点となりました。現在残る建物は明治時代中期に造られたもので、キリシタン資料館として見学することができます。
潜伏キリシタンが移住した
小さな島に造られた頭ヶ島天主堂

五島列島は、福江島のある下五島と中通島、小値賀島などからなる上五島に大きく分かれます。上五島の大きな島、中通島に隣接する頭ヶ島(かしらがしま)は無人島でしたが、幕末になって弾圧を逃れた潜伏キリシタンが移住してきました。
五島崩れと呼ばれる激しい弾圧によって一時期無人にはなったものの、禁教令が解けた後の明治時代中期に木造の教会が建てられ、大正時代には石造りの美しい教会・頭ヶ島天主堂が建てられました。潜伏キリシタンが移住により信仰を維持した歴史が良くわかる場所として、頭ヶ島天主堂のある頭ヶ島の集落が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産に登録されました。
※頭ヶ島天主堂の見学には事前連絡が必要です。
五島列島には、他にも
数多くの教会が点在しています

堂崎教会、頭ヶ島天主堂以外にも、五島列島には数多くの教会が点在しています。
世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産では、久賀島(ひさかじま)の集落にある旧五輪教会堂、奈留島の江上集落にある江上天主堂、野崎島の集落にある旧野首教会があります。
その他にも福江島の水ノ浦教会、井持浦教会、中通島の青砂ヶ浦教会、中ノ浦教会など歴史を重ねてきた教会がありますので、美しい五島の風景とあわせて、ゆっくり時間をかけて点在している教会を訪ねてみるのも良いですね。
続いてはライトアップされる教会を訪ねます。
教会を美しく照らすライトアップにも注目!

長崎の夜景と言えば、稲佐山からの1000万ドルの夜景が良く知られていますが、市内の一部の観光名所でも常時ライトアップが行われているのをご存じでしょうか。

教会では浦上天主堂や大浦天主堂が対象となっていて、22時頃までライトアップされています。建物の外から眺める形にはなりますが、夜の闇に浮かび上がる教会の姿は幻想的で、きっと忘れられない思い出になることでしょう。
長崎にある代表的な教会をピックアップしてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
記事内でも紹介しましたが、一部の教会は潜伏キリシタンの歴史を後世に語り継ぐべきと判断されて、2018年に世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録されています。
貴重な歴史を刻んできた教会群と美しい風景が各地に広がる、長崎へぜひ足を運んでみてください。
長崎の教会群へのアクセス
山陽新幹線 博多駅で在来線に乗換、特急「リレーかもめ」で武雄温泉駅下車し、西九州新幹線へ乗換、武雄温泉駅から長崎駅へ。
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