【2022年11月29日】
船でしか行くことができない、秘境の温泉があることをご存知ですか?
富山県南砺市にある大牧温泉観光旅館。ここは庄川峡の切り立つ崖に張り付くかのように建ち、向かうまでの交通手段は遊覧船のみという、まさに秘境で秘湯の温泉旅館。
今は峡谷となっている湖の底ですが、かつてはここに村落がありました。しかし小牧ダムが完成すると村はダムの中に沈み、大牧温泉だけ残ったのだそうです。
昭和5年小牧ダムの完成と同時に大牧温泉観光旅館が建てられました。船でしか行くことができない温泉宿として、その希少な存在と湯の良さが評判を呼び、今ではメディアやドラマなどでも度々紹介されるようになり、全国的にも人気がある温泉旅館となっています。
1日目:大牧温泉観光旅館

わざわざ船に乗らないと行くことができない温泉ってどんなところなのだろう?
人気の秘密とその魅力を紐解き、存分に堪能してみたいと思った私は早速大牧温泉観光旅館へと向かいました。
北陸新幹線新高岡駅下車し、乗船所がある“小牧港”を目指します。車で40分強、バスだと約70分。小牧港へ到着すると船を目の前に見て、「いよいよここから旅が始まる」という気持ちに。

庄川峡遊覧船は1日3〜4本の運行。定刻になりました。いよいよ船に乗船し、小牧港から大牧温泉観光旅館に向けて約30分の船旅がスタートです。動き出すと窓から、そして船上から季節の景色と渓谷美を楽しむことができます。

屋外デッキに出てダイナミックな景色を心地よい風に当たりながら堪能。同じように見えても全然違う自然の景色。次々と視界に飛び込んでくる季節の景色が美しくてつい見入っていると、30分があっという間。峡谷の岸壁にせり出すように一軒宿の大牧温泉旅館の姿が見えてきました。到着です。

船着場方階段を上がるとすぐに大牧温泉観光旅館があります。玄関前に立つと、ついに秘境の温泉に到着したと、なんだかとても嬉しい気持ちに包まれました。

ここは秘境で秘湯の温泉旅館ですが、平成期に大幅リニューアルを重ねているので、館内もとてもきれいで落ち着いた空間。上質な雰囲気が漂っていて館内も客室も…ため息が出る程、美観です。囲炉裏を備えた民芸調のロビーからも、そして客室からも庄川峡の絶景が目の前に広がる造りで眼福。

温泉は男女別で女性は大浴場と中浴場、露天風呂の3か所。男性は大浴場と露天風呂、テラス風呂の3か所。温泉の湯は、現在も湖底から湧く源泉を引き込み使用しています。湯量は毎分320ℓとかなり豊富。 浴槽はそれぞれ雰囲気や湯温が異なるので、温泉を入り比べながら自分好みの温泉を探しつつ、よき湯を存分に楽しむことができます。なかでも野趣溢れる露天風呂は、山と川の大自然に囲まれ、眺望抜群で大人気。

四季折々の景色を見渡しながらの湯浴みは、まさに至福のひととき。泉質は、ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉。そして硫化水素臭も漂う湯は、温泉でしっとり保湿が叶う美人の湯。美肌温泉です。

大牧温泉旅館で供される食事は、富山の味覚を楽しむことができるものばかり並びますが、なかでも宿の名物でもあるホタルイカの沖漬けは特に絶品で、深く印象に残るものでした。

大きなホタルイカは地元庄川の柚子を使用して漬けているというこだわりで、いい塩梅に漬けられたホタルイカと、控えめながらもしっかりと存在感がある柚子のコラボレーションが絶妙です。

携帯もWi-Fiもほとんど繋がらない秘境の秘湯である大牧温泉旅館。ここは山と川以外何もないけど、何でも便利に揃う今の時代において、何もない、ただ自然の景色と温泉を味わうことができるとても貴重な場所かもしれません。自然ならではの絶景と温泉をとことん味わうことができるという贅沢な時間を味わい尽くすことができる場所でした。
富山・庄川温泉郷 大牧温泉
〒932-0371 富山県南砺市利賀村大牧44
Tel:0763-82-0363
1日目:白川郷

大牧温泉旅館の後は白川郷へ。白川郷は、岐阜県内の庄川流域の呼称で、岐阜県白川村の中心部からやや北側に位置する荻町合掌集落のことをいいます。114棟の合掌造りが現存、約630人の村民が今もこの地で暮らしていて、日本の原風景である農村文化や生活、暮らしを見て感じることができる、日本の故郷のような場所。
ここは、かつて日本の秘境とも言われた日本有数の豪雪地帯。厳しい気候風土に耐えられるよう急勾配の屋根を持った茅葺の合掌造りは、先人の知恵によって生み出されたものです。
日本の原風景とも言える程美しい景観をなすこの合掌造り集落が評価され、1976年に重要伝統的建造物群保存地区として選定。さらに1995年には、富山県にある五箇山と共に、白川郷・五箇山の合掌づくり集落として、ユネスコの世界遺産に登録されました。

白川郷はいくつかの場所で見学や、絶景を楽しむことができますが、今回は世界遺産・白川郷全体を見渡すことができる高台へ。ここは白川郷集落を一望できる絶好のロケーションが広がる場所で壮観です。田んぼと茅葺屋根の建物と自然の景色が、とにかく素晴らしいので思わず写真に収めたくなり何枚も写真を撮影。記憶と記録を残しつつ、景色を目に焼き付けました。
岐阜県大野郡白川村荻町 荻町城跡 展望台
2日目:飛騨高山

2日目。飛騨高山へ移動しました。ここは城下町の風情が漂う古くて趣ある街並みが素敵で散策をしていても楽しいところ。まずは名物“飛騨牛”を味わいたい、ということで、創業200年の老舗「味の与平」へ。ここは舩坂酒造店蔵元直営店で、日本酒と飛騨牛を一緒に味わうことができるお店です。

メニューを見ると、どれもおいしそうなので迷うところですが、ここはすきやき御膳を選びました。
サシが美しい霜降り牛肉のすき焼き。割下は関東風でも関西風でもなく、飛騨高山オリジナル。味わいは飛騨牛と野菜の味が引き立つくらいやさしい味の割下が、肉と野菜をさらにおいしく引き立たせ、絶品です。

ここは蔵元直営店。日本酒が豊富に揃っているので、飲み比べセットをつける人も多いのだそうです。地酒“深山菊”純米酒は、きれいな食中酒だけど、飲み進むにつれて米のふくよかさが現れ、これがお肉の旨味と甘さとピッタリマッチ。お肉も日本酒も、両方のおいしさがさらにアップしました。

蔵元直営レストランの奥には、日本酒の蔵と、お土産屋さんがあり、舩坂酒造店の日本酒を有料で試飲することができます。

ずらりと並んでいますが、せっかくなので、ここでしかいただけない限定酒を。辛口の原酒で、やわらかく控えめな香り。喉越しとキレの良さが心地よい1本で、サシが入ったお肉との相性がピッタリ合うわけだな、と飲みながら大きく頷いてしまいました。

有限会社舩坂酒造店(併設食事処 味の与平)
〒506-0846 岐阜県高山市上三之町105番地
営業時間
<舩坂酒造店>8:30~20:00(短縮営業あり) Tel:0577-32-0016
<味の与平>lunch 11:00~14:30l.o / Dinner
17:00~20:00l.o
TEL : 0577-32-0016
2日目:新穂高ロープウェイ

奥飛騨温泉郷は、岐阜の中でも人気がある温泉郷。ここには北アルプスのダイナミックな景色を満喫できる“新穂高ロープウェイ”に乗り、空中散歩。季節の景色を楽しみます。

ロープウェイは、新穂高温泉駅〜鍋平高原駅をつなぐ第1ロープウェイと、しらかば平駅〜西穂高口駅をつなぐ第2ロープウェイがあります。一番上まで登りたかったのですが、あいにくの天気だったということと、また第1ロープウェイを降りてから見た紅葉がちょうど見頃を迎えていたので、ここで休憩をすることに。

ロープウェイを乗り換える鍋平高原駅としらかば平駅までは徒歩3分程の距離。ここには新穂高ビジターセンターがあり、カフェも足湯も、そして“神宝乃湯”で露天風呂もあり、温泉を楽しむことができます。
標高1308メートル。さすがに乗る前との気温差をかなり感じました。ちょっと肌寒さを感じて……パン特有のいい香りについ呼ばれてしまい、駅の中にある「アルプスのパン屋さん」にて休憩を。コーヒー片手に、窓からのぞく紅葉の絶景を眺めながらホッとひと息、休憩です。

さらにビジターセンターには足湯もあります。足湯に浸かりながら見る紅葉もちょうど見頃を迎えたばかりで、美しい秋の景色に心も洗われました。
足湯の温泉の泉質は単純硫黄泉で、ほんのり硫黄特有のにおいに包まれます。場所により温度が違いますが、どこでも適温。足湯に浸かりながら、旅の疲れをほぐしました。

富山の秘境温泉からスタートし、岐阜の古い建物と街並み、そしてロープウェイで空中散歩と、見どころが豊富だった富山〜岐阜の旅。秋ならではの絶景を、あちらこちらで愛でて楽しむことができた旅でした。
旅は心の洗濯。都会の喧騒を離れて非日常の環境を旅することで、今しか見ることができない一瞬の季節の景色を間近で楽しむ…旅は人生を豊かにするものだと、旅をしながら改めて実感しました。
〒506-1421 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高温泉
新穂高ロープウェイ
Tel:0578-89-2252
