メインコンテンツにスキップ

www.jr-odekake.net JRおでかけネット

  1. HOME
  2. 旅・キャンペーン
  3. 今こそ、行きたい旅がある。大人のイマ旅
  4. 神話の語り継がれる2つの島、壱岐島・対馬島を巡る旅

トラベルライター・木崎ミドリがゆく、神話の語り継がれる2つの島、壱岐島・対馬島を巡る旅

【2023年1月24日】

木崎ミドリ 国内旅行 ガイド

トラベル&フードライター。旅行雑誌の編集者時代には、全国のグルメを紹介する連載を担当。日本を大きく2周する。現在は、旅と食を中心に執筆を行い、インタビュア・撮影ディレクターとしても活動を行う。最近は島旅の機会が増えている。

この一年、私は、いくつの島を巡ったことでしょう。春には神奈川県の猿島へ。初夏には自転車で瀬戸内海の生口島・大三島・伯方島を巡り、秋には沖縄県の慶留間島・阿嘉島へ渡り。そして、この冬。ここ、長崎県の対馬島・壱峻島に訪れることができました。

日本を構成する島は、6000を超えます。1つとして同じ島はなく、その大きさも形も、辿ってきた歴史も違います。海に囲まれていても、漁業の盛んな島もあれば、そうでない島も。

そんな島々の特徴に魅せられた日々でしたが、今回は「国境の島」とも呼ばれる朝鮮半島までわずか50kmのところにある対馬島と、「神の住む島」とも呼ばれ1000の神社のある壱岐島の2つを巡る旅について紹介していきたいと思います。

1日目:午前 和多都美神社

対馬島へ行くには、福岡空港もしくは長崎空港から飛行機で対馬やまねこ空港に降り立ちます。縦長のこの島は、面積約700㎢と、北方領土と沖縄本島を除けば日本の離島で3番目に大きい島。自転車で巡れるような島々を周ってきた私が、空港から車で目的地まで向かう途中にまず感じたのは、「大きな島だなぁ!」ということ。

そして辿りついた最初の目的地は、島のちょうど真ん中あたりに位置する和多都美(わたづみ)神社。本殿より湾に向かって連なる5本の鳥居のうち2本が海中に立つ、神秘的な景色の美しい神社です。

和多都美(わたづみ)神社の5本の鳥居のうち本殿側の2本。山と海に囲まれた神秘的な空気を感じながらお参り。

彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト)と、豊玉姫命(トヨタマヒメノミコト)をお祀りするこの神社は、「山幸彦と海幸彦」の物語で有名な神話のもとになった場所。彦火火出見尊が兄の釣針を失くしてしまった弟・山幸彦。豊玉姫命がその妻となる海神の娘なのです。

神話では、潮の満ち引きの力を持つ「潮盈珠(しおみつたま)」と「潮乾珠(しおふるたま)」が出てきます。潮の満ち引きによって変わる鳥居の景観は神話の世界そのもの。その景色は、訪れた者の心を神話の世界へといざないます。

5本の鳥居のうち海側の3本。奥の2本は潮が満ちると海に浮いているようにみえる。境内には一風変わったおみくじも。

境内で引けるおみくじも、「日本の神話おみくじ」。私は、日本の島々と八百万の神様を生んだ神様である、イザナギノミコト様のお言葉をいただきました。旅行は海や湖の近くが吉。方角は南西。色は水色。と、今の状況ですか?というような内容に思わず笑みが。恋愛に限らず仕事や学業でも「良縁に恵まれる時」とのことなので、今後を楽しみにしておきます。

和多都美神社
住所:〒817-1201 長崎県対馬市豊玉町仁位字和宮55
電話:0920-58-1488
料金:裏参道の拝観料1人100円
各種受付時間:9:00~17:00(12:00~13:00除く)
アクセス:対馬空港から車で40分

和多都美神社をあとにし、漁港で遅めのお昼をとって、この日のうちにフェリーで壱岐島へ渡りました。

対馬の巌原港から2時間ちょっと。壱岐の島影がみえてきた。広大な空と海原が都会の喧騒を忘れさせてくれる。

2日目:午前 岳ノ辻展望台

翌日は、朝早くから岳ノ辻展望台へ。標高212.8mの、島の最高峰の岳ノ辻山頂に設けられた展望台です。これから島内を巡る前に、その全容をここから一望。対馬島からフェリーで2時間ほどの距離にある壱岐島(いきのしま)は、面積約135㎢と対馬島の1/5の大きさです。

中央展望台からは左手奥に半城湾がみえる。壱岐島は平坦な島で、最高峰の岳ノ辻展望台から島全体を見渡すことができる。

『古事記』の国生み神話には、壱岐島は伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)によって作られた8つの島のうち、5番目に生まれた島だといいます。神話の根付くこの島には、登録された神社だけで150社を超え、小さな祠(ほこら)を合わせると1000もの神社があるとのこと。

古代より、大陸との海上交通が盛んであったこの島には、縄文、弥生、古墳時代の遺跡が多く残っています。日本の国生みの歴史の伊吹を感じながら、島を巡っていきましょう。

2日目:午前 はらほげ地蔵

壱岐島は海産物に恵まれた島。海女や海士によって獲られるウニやアワビ、サザエなどの海産物が名物です。「海女の里」として知られる八幡浦には、満潮になると胸まで海に浸かる、海中に祀られたお地蔵様がいらっしゃると聞いてご挨拶に伺いました。

海の中に佇む6体のお地蔵様。お腹にみかん大ほどの穴が開いている。訪問時はお地蔵様の足元が海に浸かっていた。壱岐らしい画になるスポット。

島の東にある海岸には、お地蔵様の姿が。遭難した海女さんや捕獲したクジラを供養するため、体内の病気を洗い流すためなどの意味も込められた6体のお地蔵様は、腹が丸くえぐられているため「はらほげ」と呼ばれ、干潮時にこのお腹の穴にお供え物を入れ、海へ祈りが捧げられます。島に訪れたご挨拶をし、海の中に佇む、その姿を写真におさめさせていただきました。

2日目:午前 金刀比羅神社

海沿いを車で走っていると、湾の真ん中にある青島に架かる、青島大橋のたもとにある、幾重にも連なる鳥居が目に入りました。祠に向かって光の差し込むその様子が美しく、思わず足を止めます。

ちょうど日が差した参道が神々しい。車道の脇に突如現れる神社は木に囲まれた目をひく外観。右にみえるのが壱岐島で一番長い青島大橋。思わず車を止めお参り。連なった鳥居も印象的。

鳥居には、金刀比羅(ことひら)神社の文字が。鳥居の先、湾に向かってせり出した小高い丘には、壱岐の重要な港である芦辺港の守護神が祀られていました。

2日目:午前 小島神社

さらに車を走らせていくと、湾の中に佇む小島の前にも鳥居が見えました。さすがは、島全体で1000もの神社を有する「神の住む島」。至るところで、神様のお祀りされている場所に出合います。

この小島神社は、干潮時の前後、数時間だけ海から参道が現れ、歩いて参拝することができるようになるという神秘的な場所。小島全体が神域とされているため、小枝の1本も島の外に持ち出してはならないとされています。

手前が参道の一部。壱岐のモンサンミッシェルとも称される小島神社。

私が訪れた際には、ご覧の通り満潮で、お参りする道は海の中。そのため、海を隔てた場所からご挨拶を。時折、さっと雲の合間から差し込む光に、歓迎されているような気持ちになりました。昨日の対馬から始まり、海の神様にたくさんご挨拶をすることができ、徐々に気持ちが澄んでいくのを感じます。

2日目:午前 原の辻󠄀遺跡

寄り道がすぎましたが、続いて次なる目的地の「原の辻󠄀遺跡」(はるのつじいせき)へ。広い平野には、弥生時代から古墳時代初期にかけての大規模な多重環濠集落が。先ほど金比羅神社や小島神社のあった内海湾は、古代船が往来する玄関口でした。湾からほど近いこの丘陵地には、使節団が滞在するための建物や荷物を保管しておくための倉庫などが再現されて残っています。

再現された集落から古代の人々の息遣いが感じられる。再現された建物を間近でみることができる。

これは、祭儀場内につくられた祭祀用の祭具や食材を保管しておくための倉庫。中をのぞくこともできました。建物や扉のサイズ感で、古代の人々の身長や暮らしを具体的にイメージすることができます。古代の世界へタイムスリップしてしまったような不思議な感覚に。

さらに、原の辻󠄀の玄関口にある「原の辻󠄀ガイダンス」には、原の辻󠄀遺跡からの出土品が多数展示されているほか、公園全体の模型で弥生時代の一支国の様子を見ることができます。

親切なスタッフの方にご対応いただき、ほっこり。模型で大規模な環濠集落を見ることができる。

原の辻󠄀遺跡・原の辻󠄀ガイダンス
住所:〒811-5322 長崎県壱岐市芦辺町深江鶴亀触1092-5
電話:0920-45-2065(原の辻󠄀ガイダンス)
料金:入場無料(各種体験は有料にて実施)
営業時間:原の辻󠄀ガイダンスは9:00~17:00(最終入館 16:30)
定休日:毎週水曜日、12月29日~1月3日
※原の辻󠄀遺跡(原の辻󠄀一支国王都復元公園)は営業時間外・定休日でも入場可
アクセス:芦辺港から車で20分

2日目:午後 割烹一富士

朝から島のあちこちを巡り、そろそろお腹が空いてきました。お昼ご飯には、この旅の目的のひとつでもある「ウニ丼」をいただきます。訪れたのは、玄海灘の壱岐の幸が丸ごと食べられるという「割烹一富士」というお店。

美味しいものの宝庫としても知られる壱岐島。古代よりウニやアワビなどの海産物に恵まれたこの島には、新鮮なウニを求めて県外からも多くの人が訪れます。島内に約300人いる海女・海士が、素潜り漁で資源を守り、乱獲をしないよう配慮しながら獲っている、島の人々に大事に食されているウニ。島の地魚と共にお膳でいただけるとのことでとても楽しみにしていました。

割烹一富士。壱岐の海の幸をふんだんに活かした「うに刺身御膳」をいただく。

ツヤツヤと輝くウニが、丼ぶりで登場。お膳に添えられたイカ・ヒラス・タイ・マグロなどのお刺身も、全て地のもの。壱岐の刺身醤油でいただきます。この日の味噌汁には、タイが。その日の魚の状態でアラやカマなどを使用することもあるそうです。

白飯にたっぷりのった生ウニ。最初の一口。高鳴る期待感に思わず顔がほころぶ。

まずは何もつけずに、ひと口。海水の潮味が聞いていて、何もつけなくても美味しい! 添えられているタレは、醤油にウニの風味のエキスを加えたものだそう。タレをかけて食べてもまた、美味。ウニはもちろんですが、お刺身のイカも、ねっとりと舌に絡みつく濃厚さ。壱岐の海の恵みをたっぷりと味わうことができました。

割烹一富士
住所:〒811-5532 長崎県壱岐市勝本町大久保触1827-5
電話:0920-42-0072
料金:うに刺身御膳4500円、生うにめし3600円
営業時間:12:00~14:00 / 17:00~22:30(ラストオーダー22:00)
定休日:第2火曜・第4火曜
アクセス:郷ノ浦港から車で28分

2日目:午後 黒崎砲台跡

お腹も満たされ、もう少しだけ散策を。訪れたのは、黒崎砲台跡。1933(昭和8)年に完成したという砲台は、対馬海峡を通過する艦船を攻撃するために設置されたそうです。しかし、実戦で使用されることはなく終戦を迎え、現在は跡地のみが残っています。東洋一といわれるこの砲台跡は、戦争遺産に。入口には砲弾も。近づいてみると自分の身長と変わらない、その大きさに圧倒されます。

黒崎砲台跡入口。内部の地図と砲弾のレプリカが展示されている。

2日目:午後 猿岩

砲台のある場所からすぐ、黒崎半島の先端には猿岩と呼ばれる猿の形をした岩があるということで、訪れてみました。小高い丘から海を眺めると、そこには本当に「猿」が!

視界に入った瞬間すぐにわかる大きな猿岩。まさに吠えている猿!自然の造形とは思えない。

アップで見てみましょう。まさに、猿! 岩に所々沿うように生えた木々も、絶妙に猿の頭や背中の毛並みを表現しています。自然によって造られたこの約44.9mの岩は、奇岩百景にも登録されています。

2日目:午後 御津ノ辻休憩所

帰り道には、御津ノ辻休憩所でひと息。半城湾の美しい島の自然の風景に癒され、壱岐の景色も見納めです。

車道のすぐ脇にあるこぢんまりとした休憩所。島らしい風景が望める。

翌朝は、少しホテルでのんびりと過ごしてから港へ。こちらに向かってくるジェットフォイルの姿を見て、旅の終わりを実感します。郷ノ浦港から博多港まではジェットフォイルで1時間10分。船から見える島の景色に後ろ髪をひかれつつ、帰路につきました。

郷ノ浦港へ近づいてくるジェットフォイル。博多港へ。帰路につく。

日本と韓国の国境に近い場所にある2つの島。そこには、かつて大陸から日本へ渡ってきた人々の足跡と語り継がれてきた物語が静かに根付いていました。古代の人々が不思議に思った潮の満ち引き、そして生まれた神々の物語。対馬島・壱岐島ならではの静かで厳かな空気感に包まれて、海の恵みをたくさんいただいて。心身ともに癒された、冬の島旅となりました。

最新のfacebookページはこちら

ページトップへ戻る