呉の地酒が飲める、お品書きのない小料理店
呉中通商店街(れんがどおり)の路地裏にしっぽりと佇む、L字カウンター8席だけの小料理店「魚菜や」。小洒落た麻暖簾をくぐると、「いらっしゃい」と割烹着姿の女将・渡会美津子さんが迎えてくれます。同店は創業40年以上続く老舗。2017年に代替わりし、今は二代目として渡会さんが切り盛りしています。早速注文しようと店内を見渡すも、呉の日本酒以外お品書きが見当たらない。女将さん曰く、「お品書きはないんです。先代から引き継いだおでんと日替わりおばんざい、その日届いた瀬戸内海の地魚を使った酒肴がメニューです」。まずは地酒を注文し、カウンター前に並ぶ料理から好きなものを選んでいただくのが“魚菜や流”だそうです。
こだわりの日本酒5選!お刺身やおでんと一緒に
名だたる酒蔵が点在する呉の日本酒の中でも、こだわりの地酒ラインナップは「宝剣」「千福」「華鳩」「雨後の月」「白鴻」の5銘柄(料金は一律600円)。「呉の日本酒は個性的な味が多くお客さんの好みが分かれます。若者や女性はさらりと飲める『雨後の月』の冷やが人気。ハンバーグなどの洋食と一緒に楽しまれています」と女将さん。「『宝剣』は辛口でキリっとした飲み口から男性ファンが多く、逆に『華鳩』と『白鴻』はまったり系なので、日本酒玄人や料理人さんといった食へのこだわりが強い方に好まれていますね。呉の地酒は全般的に甘口が中心で、瀬戸内海の青魚や白身魚との相性が良く、1杯目はお刺身と一緒に味わっていただきたいです」。また、寒い時季になると需要が高まるのが燗酒。「個人的に燗にするなら千福がおすすめ。千福は戦前から戦中にかけて海軍さん御用達の日本酒だったんです。大衆酒という点でも呉の人は馴染みが深いと思います」。燗酒と熱々のおでん…言わずもがな王道の組み合わせです。
映画主演キャストお気に入りのペアリング
地元の人はもとより、近年は観光客も訪れているそうです。呉市は映画「この世界の片隅に」「孤狼の血」など数々の人気作のロケ地で、映画関係者も好んで足を運んだことが話題となり、今では聖地巡礼のスポットになっています。注目は、「孤狼の血」の主演キャストがお気に入りだった「雨後の月」と「おでんのスジ」の組み合わせ。同じ席に座り、同じメニューを注文するファンもいるとか。また、観光客の方から新しい日本酒の味わい方を教わることがあるそうで、「お客さんの要望で、初めておでんの出汁割りを作りました。スルっと飲めて、すごくおいしいんですよ」。
地元の人が愛する呉おふくろの味
カウンターに並ぶ日替わりのおでんやおばんざい以外、お客さんの食べたいものを提供するのがこの店のもう一つの魅力です。常連客は「家に帰ってきたような気分でくつろげるお店。女将さんがフランクだからすごく居心地がいいんですよ」「初めてお店に来た人でもいつの間にか仲良くなっています。実家の食卓のようにみんなで会話するのも楽しいですね」。お客さんにとって呉のおふくろの味となっているようです。オシャレな酒器に注がれる1盃…今宵も女将さんの手料理に呉地酒がすすみます。
「魚菜や」二代目女将 渡会美津子さん
2017年に先代女将より「魚菜や」を引き継ぐ二代目。着物姿の接客もトレードマーク。おでんやおばんざいの他、お客さんの要望に合わせた手料理も提供しています。
魚菜や
- 呉市中通4-1-24
0823-24-7409
[営業時間] 17:00~23:00
[定休日] 日曜・祝日
[席数] 8席(カウンター:8席)
※新型コロナウイルス感染予防対策を徹底し、お客様が安心して来店できる環境を整えています。
TEXT BY TJ Hiroshima-タウン情報ひろしま