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2023.03.29

  • sake

秀逸なる日本料理と広島の地酒の
巧みなペアリングで魅了する
ホテルレストランで広島を味わう旅へ
広島“酒”コラム 第十七回

広島のメインストリートである平和大通り近くに2022年に開業した「ヒルトン広島」。海外からのゲストも多く訪れるホテルの6階にある日本料理「泉水」では、日本全国各地の酒とともに広島の地酒を常時約20種類取り揃え、ワインと日本酒の両方を熟知したソムリエがスタンバイ。国内外からのゲストに向けて、和食と日本酒が醸し出す魅力を伝えています。

広島の気候風土が育む多彩な地酒を極上の和食とともに

日本料理「泉水」は、ミシュラン2つ星を獲得した「京料理 たか木」のオーナーシェフ、高木一雄氏が監修する日本料理レストラン。「懐石料理 洵(しゅん)」、「鉄板焼 渾(こん)」、「寿司 泔(かん)」の3つの和食エリアから構成される美食のステージが広がっています。ここで厳選した地元広島の食材を多く使った料理と地酒の組み合わせを提案しているのが、ソムリエとSAKE DIPLOMA(日本酒ソムリエ)の資格を持つ前原理恵さん。「広島の気候は、瀬戸内側は温暖で県北部は冷涼。地酒が生まれる土地も海沿い、里、山あいと様々です。醸される酒も甘口から辛口、淡麗から濃厚と多彩で、料理との組み合わせを大いに楽しんでいただけます」と、ペアリングの魅力をアピールします。

枯山水の庭園を前にしながら、職人が目の前で握る寿司を味わえるカウンター席。

鉄板焼のカウンター席からは、広島の街並みを見下ろしながら食事が楽しめるのも魅力。

県内の酒蔵を巡り、味わい、受け取った想いを伝える

日本料理「泉水」で生み出される料理にはどの地酒を組み合わせるのが最適なのか、西条や安芸津など広島県内の蔵に足を運び、前原さんが中心となってスタッフ自らが試しながら厳選しています。「ワインのブドウと同じで、酒米も寒暖差や採光、日照時間などの自然条件が良くないとおいしい酒は生まれません。酒どころの一つである安芸津が瀬戸内海沿岸部の軟水を活かした酒づくりの始まりの地であるといった、酒が生まれた環境や、造り手が寄せる酒づくりへの想いなど、背景まで含めて選んでいます」と前原さん。単に提供するのではなく、酒を味わい、造り手の想いまで受け取った上で、お客様に伝えることを信条としています。より良いサービスを求めて、時間があれば食べ歩きをしながら料理と酒を常に勉強。「甘辛い味つけの料理なら、芳醇な味わいの酒を温燗や日向燗(ひなたかん)など温度を上げて提供してみよう」など、自ら体感して納得してからペアリングを提案するそうです。また、昨今の和食ブームから日本酒の需要は高まっていて、ヨーロッパの一流ホテルのトップソムリエなどが審査員を務める日本酒コンクール「Kura Master(クラマスター)」では、千福や富久長といった広島の地酒にも注目が集まっています。「海外からのお客様に対しても、お酒に込められたストーリーを伝えていくことを重視しています。『こんな酒米や酵母を使うことでこの味わいを醸し出しているのです』といったことをお話しすると会話が盛り上がりますし、酒づくりについても興味深く聞いていただけます」と前原さん。一方でアルコール度数が高く、日本酒に苦手なイメージをもつ外国人も多いようですが、最近では軽い飲み口や11〜13度くらいの低アルコール度数の日本酒も増加中。「『日本酒っておいしいね』と思ってもらえるようにしていければ」と、前原さんは“お酒のプロ”としてさらなる向上をめざします。

着席後、盃(さかずき)で振る舞われる迎え酒。美しい銚子で注がれる。

広島地酒飲み比べセット3,500円。Kura MasterやSAKE COMPETITIONといった世界規模の品評会で受賞経験をもつ酒蔵が生み出す地酒3種類をグラスで提供する、広島地酒飲み比べセット3,500円。淡麗な富久長純米吟醸八反、宝剣純米超辛口、芳醇な味わいの賀茂鶴ゴールド大吟醸といった、明確な味わいの違いを楽しむことができる。

すべてが手作りで、中には作家ものも含まれているという酒器は、陶器やガラス、飲み口の厚みや口径など実に様々で一つとして同じ物はない。好みの酒器を選べるが、「辛口の酒ならこの酒器がおすすめ」といった具合に酒と酒器の相性もあるため、前原さんに相談して決めると新たな発見ができそうだ。

日本料理の良き伝統を残しつつ、新たな試みにも挑戦

日本料理「泉水」で料理長を務めているのが、ヒルトン大阪の日本料理店で料理長を務めた実績をもち、和食の道31年の坂本修二さんです。懐石料理においては、季節感とともに日本の文化・伝統を伝えることを大切にしながら料理で豊かに表現。とりわけ海外からのゲストに対しては、日本の文化を伝えるべく五穀豊穣など祈りが込められた料理をていねいに説明しながら提供すると、大いに喜んでもらえるといいます。そうした姿勢と同時に、「後世に引き継ぐべき伝統は残しつつ、新しいことを積極的に取り入れていくことも大切だと考えています」と坂本さん。淡い味わいのかぶら蒸しに塩味の強いキャビアをのせ、マッチングの妙味を楽しんでもらうのもその一例です。坂本さんが「安くておいしい」という瀬戸内を中心とした魚介や、全国生産量の約6割を福山が占めるクワイなど、広島らしさに満ちた食材の持ち味を活かしながら、広島の地酒とのペアリングを意識した巧みな料理構成も魅力的です。

季節ごとに変わる懐石コースの焼物の一例。例えば春は、たけのこの木の芽焼き、菜の花のおひたしなど色合いも大切に考えられた品々が彩り豊かに展開。オマール海老のふきのとう味噌田楽には、軽快ですっきりとしつつリッチな味わいの「純米大吟醸 白牡丹 原酒」、金柑の蜜煮には、白麹を使いレモンのようなイキイキとした酸味が特徴の「純米酒 富久長 海風土(シーフード)」といったペアリングを提案。「海風土」は瀬戸内育ちの新鮮なカキを使ったカキフライなど、魚介料理と合わせて白ワイン感覚で楽しむのもおすすめ。

左から白牡丹酒造の「純米大吟醸 白牡丹 原酒」、今田酒造の「純米酒 富久長 海風土」、藤井酒造の「純米大吟醸酒 別格品 龍勢」

懐石コースの炊き合わせの一例。近江牛と葉玉ねぎとせりの炊き合わせには、賀茂鶴酒造の「大吟醸酒 双鶴」をペアリング。ふくよかで甘みのある酒が、口に残った脂をすっきりと流す役割を担う。精米歩合32%と磨きが多い大吟醸酒の華やかな香りを存分に楽しむため、ワイングラスで味わいたい。

地酒と秀逸料理で楽しむ“広島めぐり”のススメ

前原さんいわく、「外国人のお客様からは、広島は都会と自然のバランスがほどよく取れていて、魚介や野菜、果物、そして地酒と、おいしいものがたくさんあって人も親しみやすい街という印象を多く聞きますね」とのこと。海、里、山を擁する広島の各地で育まれた多彩な地酒を楽しむことは、その酒が生まれた地を旅する味めぐりにもなります。そんな広島の地酒と、熟練職人が厳選食材で織りなす料理のペアリングで、日本料理の奥深さを存分に楽しませてくれる日本料理「泉水」。都会と自然のバランスが良く、おいしいものが豊富にそろう広島の食の旅へと出かけてみませんか。

地酒を意識した料理にも意欲的な坂本さん。「酒蔵とのコラボレーションにも取り組んで、広島の酒や食材を盛り上げていきたいですね」。

日本料理「泉水」

広島市中区富士見町11-12 ヒルトン広島6F
082-243-2700
[営業時間]
11:30~14:30・オーダーストップ14:00
17:30~22:00・オーダーストップ21:00
[定休日]なし
[席数]
「懐石料理 洵」24席(個室6~8名3室)
「鉄板焼 渾」31席(個室8名1室)
「寿司 泔」10席

TEXT BY TJ Hiroshima-タウン情報ひろしま

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※写真はすべてイメージです。

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