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だれにも優しい「角」のないレストラン、照れくさいけれど甘えられる宿…写真家・増田彩来が巡る長崎&佐賀旅【長崎編】
だれにも優しい「角」のないレストラン、照れくさいけれど甘えられる宿…写真家・増田彩来が巡る長崎&佐賀旅【長崎編】

だれにも優しい「角」のないレストラン、照れくさいけれど甘えられる宿…写真家・増田彩来が巡る長崎&佐賀旅【長崎編】

瞬間を切り取ったかのような没入感の高い作風が支持され、SNSでも多くのフォロワーを抱える写真家・増田彩来さんは、全都道府県はほぼ制覇した大の旅好き。今回、プライベートでも親交のある同世代の俳優・上原実矩さんと一緒に、長崎・佐賀をめぐる旅に出かけました。街の空気感や味覚、人々とのふれ合い……。増田さんはその魅力をどのようにレンズに収めたのでしょうか。まずは長崎編をお届けします。

増田彩来

増田彩来(ますだ・さら)
写真家 / 映像作家

2001年生まれ。東京都出身。
静止画の中に「動」を残すことを大切に、その瞬間を閉じこめたような写真が魅力の写真家。2020年、20歳になる節目のタイミングで個展「écran(エクラン)」を開催し、2023年1月にも写真展を開催予定。現在は、自主制作映画やMVの監督を務めるなど、映像作家としての活動も注目されている。

上原実矩

上原実矩(うえはら・みく)
俳優

1998年生まれ、東京都出身。俳優・モデル。
メジャー、インディペンデント問わず多くの映画に出演。近年の出演作は「青葉家のテーブル」(2021年、松本壮史監督)、「余命10年」(2022年、藤井道人監督)、「流浪の月」(2022年、李相日監督)など。
初めて長編映画で主演を務めた「ミューズは溺れない」(2022年、淺雄望監督)では高校生役のみずみずしい演技を高く評価され、第22回TAMA NEW WAVEでベスト女優賞を受賞するなど、今注目を浴びる俳優の1人。

海月食堂 思いやりがカタチになった自然食レストラン

長崎県のほぼ真ん中、大村湾に面した東彼杵(ひがしそのぎ)町に着いて、まず向かった先は「海月(くらげ)食堂」。
5年前に製麺所をリノベーションしたレストランで、地産地消でつくられた店内メニューは、野菜や果物中心のヴィーガンや健康を強く意識したギルトフリーメニューを多く扱い、世界中の人が訪れても食事が楽しめるように配慮されている。



「お肉やお魚が食べられない人にも、食事の美味しさと喜びを伝えたい」というお店の人の想いがつまったやさしい色合いの料理たち。

愛情を込めて丁寧につくられた料理は、嚙(か)みしめるたびに心がジーンとする。


ギルトフリーデザートを待ちながら、店内をぼんやり見ていたら小さな子供が遊べるスペースを見つけた。そこにあるクマのぬいぐるみと目が合って思わず笑ってしまう。
そして、あることに気づく……。ここには「角」がない。

テーブルも椅子も隅が丸いし、レストランを支える柱も側面が丸い。
段差もないから車いすでもスイスイ移動できる。きっと子供がけがをしないように、世界中のどんな人でも居心地良く過ごせるようはじめから考えてつくられたんだろうな。

建物は鉄骨構造なのに、無機質な冷たさを感じないのは、家具の木の温かみと、お店の人のやさしさを感じるからかな。
お腹と心が満たされたら、なんだかとても元気になった。

Sorrisoriso 元米倉庫で旅の思い出をカタチに

大村湾の穏やかな波の音を聞きながら散歩していると、倉庫を発見。
とりあえず入ってみよう。


Sorrisoriso(ソリッソリッソ)千綿第三瀬戸米倉庫は米倉庫をリノベーションしたスポット。倉庫内の店舗「くじらの髭(ひげ)」で東彼杵町の名産の「そのぎ茶」やくじら最中、特製味噌などのお土産が並んでいるのを眺めつつ、レジ横に売っていたカヌレを買って、併設されたコーヒーショップ「Tsubame coffee」でお茶をテイクアウトしてフリースペースで休憩する。

「誰にお土産買う?」「次はどこへ行く?」「まだお腹すいてる?」などなど、心ゆくまで作戦会議。

そういえば、仕事をしていると、予定に追われながらカフェを利用することが多い。
予定と予定の間の、時間を潰すために入るカフェ。ちょっと高いとびきり美味しいコーヒーを飲んでも印象に残らないのは、きっと心の余裕が持ててないんだ。

いまは、飲んでいるお茶が喉を通って自分に染み込んでいくのがわかる。
いつもと違う時間の過ごし方をしている自分に気づき、旅を楽しめていることを実感する。

千綿駅 波の音吸う古めかしい駅舎との一体感

再び外に出て、JR九州大村線の千綿(ちわた)駅へ。古い昭和の面影を残す木造の駅舎をくぐり、目の前に広がる大村湾の穏やかな波の音に耳を傾け、自分の呼吸も合わせてみる。

目をつむり、
空気をたっぷり吸って、
たっぷりと吐き出す。

何回かくり返して目を開けると、視界がクリアになっている。

目的もなく歩いたのは、いつぶりだろう。
歩いているだけで、何もしていないのに、満たされる。これが土地の魅力なのかな。

さぁ、宿へ向かおう。

さいとう宿場 空、海、風とごちそうを楽しむ

さいとう宿場につくと、店主のご夫婦が迎えてくれた。

「今日はどこへ行ったの?」
「楽しかった?」
「明日はどこへ行くの?」

ちょうど自分の両親に近い年齢の2人が、笑顔でまっすぐに聞いてくれるから、いつもは素直になれないけれどすんなりと「楽しかった」と答えている自分がいる。
ちょっと照れくさいけれど甘えられるのは、この街に住む人の懐の深さがそうさせるのかな。

長崎旅の初日のディナーは、さいとう宿場の特製ちゃんぽん!
特製のすだちドリンクで乾杯をした。

途中で「長崎名物の金蝶ソースをかけると美味しいよ」って教えてくれた通りに、ソースをかけてみる。酸味のある辛口ソースで美味しさがアップして、ぺろりと完食。

お腹いっぱいになったら眠くなってきたなぁ。
階段をのぼればすぐ部屋があるから、楽だなぁ。
今日は早めに寝よう。

カーテンのすき間から入り込む光で目が覚めた。
大きな窓を開けてみると、空と海しか見えない。

入り込んでくる風がやさしく頬をなで、眠気がゆっくりと消えていく。
感じたことのない解放感にしばらく身をゆだねてみよう。

「ちょっと近くを散歩してこようかな」

また目的もなく歩きたくなった。


何もするわけではないけど、笑顔になる。
空と海と風。
自然に触れるって楽しいんだな。

はしゃいだらお腹すいてきた、戻って朝食だ!

朝日に照らされた朝食はキラキラ光ってる。
旅の2日目を楽しむために湯気と共にほおばって、エネルギーチャージ!


1948年創業の「まるせい酒井製茶」で歴史とお茶を味わう

東彼杵のことをもっと知りたくなった。
そういえばさいとう宿場の人が「長崎県は“そのぎ茶”が名産だよ」と教えてくれたのを思い出した。

この町のお茶、飲んでみたい!

訪れたのは、創業が1948年という「まるせい酒井製茶」。
東彼杵でつくられるお茶は、茶葉が勾玉(まがたま)のようなかたちをしている蒸し製玉緑茶(たまりょくちゃ)。蒸し製玉緑茶は、全国的にも生産量が少ない茶葉で、渋みが抑えられたまろやかな味で飲みやすい。


お茶のことを何も知らなくても、まるせい酒井製茶のみなさんが親切に教えてくれる。
説明を聞きながら、お茶を試飲させてもらう。いろいろ教えてくれるから、いろいろ聞いて、すっかりお茶博士気分で、お土産も選ぶ。

コーヒーのほかにも好きな飲み物が増えて、また自分の幅が広がった。

お店まるごとがアート!「GONUTS」で一点もの狙い

「東彼杵にすごい古着屋があるらしい」
こんな噂を聞いて、旅の出発前に東彼杵をネットで調べて見つけた「GONUTS」。

ここは今も改装が終わっていない、進化しつづけている店。
店内はトリックアート美術館のように、いたるところに仕掛けがある。

鏡だと思ったら、ドアだった。

仕掛けを見つけて、洋服も選んで、あっという間に時間が過ぎていく。
ここで出会った一点ものの洋服は、旅の思い出と一緒に持ち帰ることにした。

なんでこんなに美味しいの? 長崎新地中華街食べ歩き

「長崎新地中華街」は、横浜や神戸と並ぶ日本三大中華街のひとつ。
江戸時代から続く歴史ある街で、横浜や神戸の中華街とは雰囲気が異なる店が並び、長崎ならではの中華料理が楽しめる。

長崎と中国の空気が溶け合った街。

「出島亭」で長崎名物グルメ「えびハトシ」を食べてみる。

パンに海老のすり身を挟んで揚げた素朴な揚げパン。
揚げたてのパンを熱々のまま頬張る。
じゅわ~っと口中で海老のうま味が広がって、あっという間に完食。


角煮まんも、桃まんもいろいろ食べたい。もう1周しよ!

長崎新地中華街で、お腹いっぱいになった。
名残惜しいけれど、次の目的地の嬉野(うれしの)温泉(佐賀県)に向けて、JR長崎駅から西九州新幹線に乗って出発!

(構成・文 玉絵ゆきの)

武雄温泉駅と長崎駅とを結ぶ 「西九州新幹線」が2022年9月23日に開業しました。在来線の特急と西九州新幹線に乗り、博多駅と長崎駅の間はこれまでより最大で30分も短くなります。

新大阪駅と博多駅の間は「山陽新幹線」で。そして、ますますアクセスが良くなった佐賀と長崎への旅を検討してみませんか。

◆旅のスポット情報

○海月食堂
https://kurageshokud.theshop.jp/ https://kujiranohige.com/shop/466

○Sorrisoriso 千綿第三瀬戸米倉庫
https://kujiranohige.com/shop/311

○くじらの髭
https://kujiranohige.com/shop/713

○Tsubame coffee
https://kujiranohige.com/shop/682

○千綿駅
https://www.town.higashisonogi.lg.jp/soshiki/zeizaiseika/3/shisetsu/1023.html

○さいとう宿場
https://www.saito-syukuba.com/

○まるせい酒井製茶
https://sonogi-sakaicha.com/

○GONUTS
https://kujiranohige.com/shop/536

○長崎新地中華街 出島亭
http://www.nagasaki-chinatown.com/tenpo/dejimatei/dejimatei.html

※2022年12月取材時の情報です。

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