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特集 2019年8月号
380余年受け継がれた 絢爛豪華な祭礼「長崎くんち」
写真提供 / 長崎県観光連盟
毎年10月7~9日の3日間、異国情緒が色濃い港町が長崎の総氏神・諏訪神社の秋の例大祭「長崎くんち」の熱狂に包まれる。「くんち」とは秋祭りの総称のひとつで、9月9日の重陽の節句を指す「おくにち」がなまったといわれている。
日本唯一の対外貿易港として繁栄した立地から、西日本一帯の守護神「鎮西大社(ちんぜいたいしゃ)」と尊称されてきた諏訪神社の創建は1625年(寛永2)。キリスト教の禁止により、その教会領だった長崎にかつて祀られていた諏訪・森崎・住吉の三社を再興したことがはじまりと伝わっている。
長崎くんちの歴史は1634年(寛永11)、ふたりの遊女が神前に謡曲を奉納したことにさかのぼるという。その後、長崎奉行の篤い保護のもと年々盛んになり、同地を訪れた外国人らにより「絢爛豪華な祭礼」として海外へ紹介されるほどの評判になった。
最大の見どころは「踊町(おどりちょう)」と呼ばれるその年の当番町が趣向を凝らして繰り広げる奉納踊。7年ごとにローテーション制で担当する。
今年は「本踊」と呼ばれる華やかな日本舞踊やダイナミックで愛嬌たっぷりの「獅子踊」、龍が豪快に舞うくんちの代名詞「龍踊(じゃおどり)」、そして、舟形に車を付けた曳物を豪快に引き回す「川船」「オランダ船」といった豪華なラインアップ。1演目は30分ほどで見せ場も違えば衣装もお囃子もさまざま、 町ごとの個性が光る。
奉納踊は市内の各所で見学が可能。観覧席は諏訪神社と八坂神社、お旅所(3基の神輿が鎮座する仮宮)、中央公園くんち観覧場の本場所と呼ばれる有料の踊場に設けられている。
長崎くんちには見せ場が満載
写真提供 / 長崎県観光連盟
本番は10月7~9日だが、祭りそのものは6月1日の「小屋入り」からはじまる。この日、踊町の出演者や世話人が紋付などの正装に身を包んで、諏訪神社と八坂神社に参拝。神前で成功を祈願して身を清める「清祓い」を受け、演し物の稽古に入るのだ。 もちろん、長崎くんちで演奏される奉納音曲の「シャギリ」も同行。笛と太鼓の独特の囃子を市中に響かせ、祭りのシーズン到来を人々に届ける。シャギリの音色を耳にすると、長崎人は気もそぞろになるという。
4ヶ月をかけて練習した演物の仕上がりは、まず10月4日の「人数揃い(にいぞろい)」で本番同様に衣装を着て演し物がお披露目され、7日からの各踊場での本番を迎える。
とはいえ、踊町の見せ場は踊場だけではない。見逃せないのが、初日の7日午後に斎行される「お下り(おくだり)」。3基の神輿が諏訪神社から波止場に設けられたお旅所へと渡御する秋季大祭の要となるもので、1,000人を超えるという大行列。しかも、諏訪神社やお旅所付近では神輿を担いだままで駆け出すという迫力。傘鉾のパレードも続くなど、見どころ満載。最終日の9日には、お旅所から諏訪神社の本宮へ御神輿が戻る「お上り(おのぼり)」も行われる。
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もうひとつ忘れてはいけないのが、踊場での奉納踊の終了後に市内のいたるところで短い踊りやお囃子が演じられる「庭先回り」。これは官公庁や事業所、各家を踊町が訪問し、店先や玄関などで敬意を表して踊りを呈上して“福のお裾分け”し、“お祝い”をするというもの。もちろん見学は自由。場所やスケジュールも公開されているので、街中を散策しながら気軽に楽しみたい。
世界の食文化が進化したユニークな長崎グルメ
写真提供 / 長崎県観光連盟
中国・オランダ・ポルトガルなどから人の流入とともにもたらされた各国の名物料理。それらは長崎の食文化とブレンドされ、唯一無二の個性的な郷土料理へと発展していった。
そんな長崎グルメの筆頭は、やはり「ちゃんぽん」。明治時代中期、市内の中華料理店「四海楼」創業者が、中国人留学生のために“安くて栄養価の高い料理を”と考案したのがはじまりだとか。小麦粉に中国・上海から伝わった唐灰汁(とうあく)を加えた独自の風味と柔らかさを誇る特製麺に、豚肉や海鮮、数種の野菜という具だくさんさが本場ならではのオリジナルだ。
もうひとつの名物が「皿うどん」。一般的に皿うどんといえば、あんかけの揚げ麺スタイルを思い浮かべがちだが、長崎においてはそうではない。ちゃんぽんの“焼きそばバージョン”として考案されたことから、焼いたちゃんぽん麺を具といっしょに炒め、スープになじませたものが定番。いずれも長崎生まれのオリジナル中華料理である。
16世紀頃、キリスト教などとともに伝来したとされるのが「カステラ」。といっても、あのしっとりとした口溶けは日本の菓子職人が長い年月をかけ、試行錯誤を重ねた末に到達したもの。製法の原点も、「カスティーリャ地方」に由来する名前も舶来だが、カステラはれっきとした和菓子のひとつ。日本初とされる新婚旅行で坂本龍馬がお弁当代わりに持参したという、長崎を代表するこの銘菓。市内に専門店が数十店舗も点在する。
また、カリカリとした食感とほのかな甘さが美味しい、通称“よりより”こと「唐人巻」に、フルーツやナッツ類がぎっしり詰まった木の実あんや黒あん(小豆)が楽しめる「月餅」、胡麻の風味を生かした「金銭餅」など、伝統の中華菓子もバラエティ豊か。華僑の人々が故郷の中国を懐かしんで作ったという家庭料理が原点ゆえか、どれも素朴で温かな味わい。形やネーミングに“縁起が良いように”との思いが織り込まれているものが多く、お土産にもぴったり!